Korombo vet column to protect your pet
Thank you to the owner who came to this page to read the "Korombo vet column".
I am currently preparing a YouTube channel for Korombo Veterinary Hospital to publish columns, receive a second opinion and etc・・・.
Please wait a few more days.
23.心臓病の治療。知っていて欲しい事。そのA(2020.10.26)
22.ペットフードにオリゴ糖は必要ありません。(2020.4.1)
21.ペットフードにオリゴ糖は必要ありません(追記)(2020.7.22)
20.短頭種犬の飼い主さん、「陰圧性肺水腫」って知ってますか?(2020.7.18)
18.「心臓病」の治療。知っていて欲しい事。(2019.7.23)
17.お願いです。冷房を使って下さい。(熱中症A)(2019.6.26)
16.季節の変わり目・具合悪くなってますよ!(熱中症@)(2019.4.22)
15.子猫・子犬を飼う前に読んでもらいたいB(2018.8.22)
14.子猫・子犬を飼う前に読んでもらいたいA(2018.7.23)
13.子猫・子犬を飼う前に読んでもらいたい@(2018.7.3)
8.てんかん発作って毎日薬飲まないとダメ?(2018.1.2)
5.もう3年毎でいいです。ワクチンの話(2017.12.21)
3.今この時期にかゆい!かゆい!なんでだろう?(2017.12.9)
1年ほど前に、心臓病のコラムを書いてから、もう、1年が過ぎてしまいました。
前回のコラムでは、
「トマト畑」が水不足で枯れた例を挙げて、
薬の投与自体が“コントロール不能の腎不全”の原因になり得る、というお話で締めくくりました。
何故、“コントロール不能の腎不全”なのかを、
どうやったら、分かり易く説明出来るか・・・・
考えて、考えて・・・しているうちに今日になってしまいました。
結論からいうと、「簡単に説明出来る方法」は・・・見つかりませんでした。
「簡単に説明出来る方法」はありませんが、
最後まで読んでいただいた時に、なんとなくでも、
「ああ、そういうことか・・な?」
と、ぼやっとでも、理解していただくことを“着地点”として、
そこを目指して話をすすめます。
第1章 現在の心臓病の病期分類とその治療について
2019年(昨年)、アメリカ獣医内科学会が「犬の慢性心臓弁疾患の診断と治療のガイドライン」を
10年ぶりに改訂しました。
「ACVIM」のガイドラインと言えば、ご存知の方もいるかもしれません。
今回の改訂で、10年前と最も大きく変わった点は、
心臓病治療薬「ピモベンタン」の使用を積極的に推奨している点です。
ACVIMの分類では、
○心雑音はあるが、心臓に構造上の変化(リモデリング)が生じていない(Bの1)
○心雑音があり、心臓に構造上の変化(リモデリング)が生じている(Bの2)
この「B−1」か「B−2」かで、治療をしない、治療する、を判断します。
原則、「B−1」は治療しません。
10年前、「B−2」の治療として、コンセンサス(意見の一致)が得られたものはありませんでした。
行われていた治療としては、食事療法、ACE阻害薬の投与、ピモベンタンの投与、強心剤や利尿剤の投与などです。
当時、最もクローズアップされていた治療はACE阻害薬の投与だったと肌で感じています。
・ACE阻害薬の血管拡張作用により、左心室の「後負荷」を軽減し、
・心臓のリモデリング(心臓病後の心臓の構造上の変化)を防ぎ、
・動脈血圧センサーの異常を、正常な状態に回復させる。
これにより、心臓病の進行を遅らせる働きがある、と理解しています。
実際、たくさんの動物用ACE阻害薬が各製薬会社から発売され、
現在まで心臓病治療薬として、広く使用されています。
話を戻して、2019年の改訂では、「B−2」でコンセンサスが得られた治療として、
「ピモベンタン」の使用が推奨されています。
そして、ピモベンタン使用のメリットには、“強い証拠”があると示されています。
一方、「B−2」でのACE阻害薬の使用のコンセンサスは得られず、
メリットについては、”弱い証拠”があると示されています。
実際、この10年の間に、動物用ピモベンタン製剤が次々発売され、
10年前に比べて、より一般的に使用されています。
この変化は何を示しているのでしょうか。
私は、“ACE阻害薬の濫用”が良い結果をもたらさなかったのでは、と思っています。
実際、診察していると、心雑音はあるが、心臓に構造上の変化が見られないペットに
ACE阻害薬が投与されているケースが散見されました。
「B−1」からのACE阻害薬の投与、「B−1」からのACE阻害薬1日2回投与などが、
心臓病の予後に影響したのではないか、そう考えています。
実際、「B−2」で咳が目立つようになった症例や
「C」で心不全症状を呈した症例には、ACE阻害薬の効果は高いと思っています。
「C」は「B−2」の次の病期で、
「心不全を起こしている、かつ、家庭での治療により日常生活を送れる犬」がここに入ります。 話を戻して、
病期の早い段階から使用する薬剤としてACE阻害薬から取って代わったのが 「ピモベンタン」ということでしょう。 ピモベンタンは、主に2つの作用を持ちます。 @心筋の収縮力の増大(陽性変力作用といいます) A血管拡張作用 ACE阻害薬との大きな違いは、 単に血管を拡張して、末梢血管抵抗を減らすだけではなく、 @の陽性変力作用を持つ点です。 添付文書には、こう記載されています。 慢性心不全の場合、 「左室収縮末期径の減少及び左室内径短縮率の増大が認められた。 なお収縮期及び拡張期血圧ならびに心拍数にはほとんど影響し なかった」 この、心不全治療薬でありながら、血圧にほとんど影響しないことが、 心不全兆候のない「B−2」での使用が推奨される理由であり、 ACE阻害薬にとって代わった1番の理由なのではと考えます。 それについては、読み進むうちに、分かっていただけると思います。 第2章 からだは、常に「今死なない」かしか考えていない。 今は、スーパーやコンビニに行けば、食品が買えて、空腹を満たせますが、 かつては狩りをして、動物の肉を食べていた時代もありました。 狩りの最中に動物に襲われ、大きな怪我や、ひどく出血することもあったでしょう。 からだは、生命に危険が迫った時、 「今死なない」ことだけを考え、 からだの様々な部位に指令を出して変化を起こします。 ここでは、「今死なない」を血圧の調節機構の面から考えてみます。 心臓病を考える時にも、血圧に関する下の式は非常に重要です。 心拍出量=血圧/末梢血管抵抗(分母が末梢血管抵抗、分子が血圧) 心拍出量は、1回拍出量×心拍数の積なので、 下記のように書き換えられます。 1回拍出量×心拍数=血圧/末梢血管抵抗(分母が末梢血管抵抗、分子が血圧) ・1回拍出量=左心室が一回に押し出す血液の量(収縮力や、血液そのものの量) ・心拍数=1分間に左心室が何回収縮するか ・末梢血管抵抗=組織の動脈の直径が小さいと抵抗は“大きい”。直径が大きいと抵抗は“小さい” 左心室の「後負荷(こうふか)」と同じことです。
・血圧=平均血圧としましょう(本来は圧の較差=最高と最低の差 だそうです) 式だけを見ると、いやになっちゃうので、実際にこう考えます。 式を変形して 血圧=(1回拍出量×心拍数)×末梢血管抵抗 にします。 ・末梢血管抵抗が大きい(直径が小さい)と血圧は“高い” ・末梢血管抵抗が小さい(直径が大きい)と血圧は“低い” ・心拍数が多いと血圧は“高い” ・心拍数が少ないと血圧は“低い” ・1回拍出量が多い(収縮力が強い、または血液そのものの量が多い)と血圧は“高い” ・1回拍出量が少ない(収縮力の弱い、または血液そのものの量が少ない)と血圧は“低い” それでは、想像力を働かせて下さい。 狩りの最中、動物に噛み付かれて出血しています。 からだは、「今死なない」ために何をするでしょうか。 出血により、血圧は下がっています。どうしますか? 血圧が下がって心臓と脳への血流が保てないと、「心肺停止」「脳死」を起こします。 よって、からだには“血圧を上げるための変化”が起こります。 ・末梢血管抵抗は“増加”します(組織の動脈の直径が“小さく”なります) ・心拍数が“増加”します
・1回拍出量が“増加”します(この場合血液が喪失しているので、収縮力が増加)
これらの変化によって、“血圧が上昇”し、 心臓や脳への血流が保たれ「今死なない」という目的が果たされます。
この「今死なない」ための“からだの変化”は
短期的に働いた場合、効果は絶大です。 しかし、長期的、言い換えるならば“慢性的に”働いた場合、 からだ、つまり臓器や組織に問題が生じることがあります。 「慢性心臓病の治療による弊害」も、この問題が生じることに関連しており、 その問題をいかにモニタリングするか、いかに治療に反映するか、 が慢性心臓病治療の成否において、最も重要な事だと考えます。 分かり易く言うなら、 「太く短く生きようとする」からだのシステムをいかに抑えこみ、 「細く長く生かす」ことが出来るか、 ということです。 第3章 からだは、常に「今死なない」かしか考えていない(慢性心臓病の場合) コラム「心臓病」の治療、知っていて欲しい事、で書いたように、 「心不全とは、心臓の異常のために全身の臓器の需要に見合うだけの血液を 心臓が駆出(くしゅつ)できなくなった結果、惹起される循環系の病的状態(循環不全)である」 (日本救急医学会HPより) ということです。 この定義中に「血液を心臓が駆出できなくなった結果」とあります。 これは第2章で血圧の式にあった“心拍出量”が低下した状態を指します。 つまり、血圧が低下した状態、ということです。 第2章でお話した通り、この場合、からだは、短期的には“血圧を上げるための変化”を起こします。 具体的には、上述の通り、 ・末梢血管抵抗の“増加” ・心拍数の“増加” ・1回拍出量の“増加” です。 これらの“短期的変化”、もっと言うなら“救急時の変化”は、 主に、「自律神経系」を介して、即座に行われます。 皆さんも聞いた事があるでしょう。「交感神経」です。 では、この変化が短期的ではなく、“慢性化”した場合はどうなるのでしょうか? からだが「今死なない」ようにするために行ったのは“血圧”を上げることでしたから、 慢性化して、「血圧は一定に保っている」という前提で第2章で出てきた式を考えます。 1回拍出量×心拍数=血圧/末梢血管抵抗(分母が末梢血管抵抗、分子が血圧) ここで、適当な数字を式にあてはめます。 僧帽弁閉鎖不全症の診断を受けた日を「第1病日」として、 血圧=140 1回拍出量60cc 心拍数120回としましょう。 60cc×120回=140/末梢血管抵抗 この式から、第1病日の末梢血管抵抗は0.0194です。 次に、無治療のまま、第365病日をむかえたとします。 この時、僧帽弁閉鎖不全症は悪化していると仮定します。 その場合、僧帽弁逆流が悪化し、 本来、全身に送られなければいけない血液が逆流し、 肺の方、つまり、左心室のひとつ前の部屋である「左心房」に血液が逆流します。 これにより、1回拍出量が60ccから50ccに低下したと仮定しましょう。 血圧140 1回拍出量50cc 心拍数120回とすると 第365病日の末梢血管抵抗は、0.0233です。 第1病日=0.0194 と比較して上昇しました。 末梢血管抵抗は血管の細さを反映します。 “抵抗が増えた”ということは、“血管がより細くなった”ことを示しています。 第365病日の状態を言葉で言い換えると、 「からだは、心臓病の進行に伴う憎帽弁逆流の結果生じた、1回拍出量の低下を補うため 末梢の血管を細くして、血圧140を維持している」 と言えます。 その場合、血圧が一定、末梢血管抵抗が単位長さあたり一定と仮定すると、 血流量は、血管半径の4乗に比例するので(ポアズイユの法則)、 仮に血管半径が1mmから0.9mmに縮んだ場合、 つまり直径2mmの血管が1.8mmに0.2mm縮んだだけで 相対的に比較して、第1病日の血流量1、に対して、第365病日の血流量は0.656に低下します。 つまり、循環血液量は、およそ35%も減少してしまうことになります 10kgの犬の血漿量(血球を含まない)を体重の5%の500ccとすると、 循環血漿量を減らして325ccに保ち、その分血管を細くしないと、 健康な心臓と同じ血圧を維持できない事になります。 なんとなく、理解できたでしょうか? 第3章 心不全と腎不全 ここでは、心不全と腎不全の関係についてのお話です。 腎不全には大きくわけて、3つの型があります。 1.腎臓の機能そのものが失われて、毒素を排出出来なくなる“腎性腎不全” 2.腎臓の機能は保たれているが、循環血液量の減少や、心拍出量の低下により、 腎臓への血液循環が維持出来ず、毒素を排出出来なくなる“腎前性腎不全” 3.腎臓の機能は保たれているが、腎臓から外尿道口までの排出路に閉塞があり、 毒素の排出が出来なくなる“腎後性腎不全” 2や3では最初、腎機能が保たれていても、次第に腎機能は低下していくのが普通です。 このことを踏まえて、 では、単純に「腎臓にとって悪いこと」ってなんでしょうか? 箇条書きにしてみると、 ・高血圧・・・腎臓の血管が高い血圧で損傷するため。 ・低血圧・・・腎臓への血流量が減ること。「腎前性腎不全」を起こし、「腎性腎不全」に進行する。 もちろん、この2つ以外にもあるでしょうが、心不全との関わりで考えます。 「高血圧も低血圧もどっちもダメってどうゆうこと?」 って思いますよね。 高血圧・・・からだが「太く短く生きる」システムを働かせることで生じる 低血圧・・・治療により、「太く短く生きる」システムを押さえ込むことで生じる と考えると、こうまとめられます。 【からだが「太く短く生きる」システムは治療によって抑え込まなければならないが、 治療をやりすぎると、かえって低血圧を起こし、腎不全を悪化させる】 さらに、 治療をやりすぎたことによって生じた“低血圧”は、 からだの「太く短く生きる」システムを刺激し続けます。 このシステムには、いくつものルートがあって、 治療によってルートをいくら遮断しても、追い着きません。 例えれば、こんな感じでしょうか。 「治療による血圧低下を感知しました。血圧上昇システム1号機を作動します」 「血圧上昇しています。・・・血圧安定しました」 「・・・一旦上昇した血圧が再び低下。再度システム1号機をを作動します・・・」 「・・・システム1号機が作動しません。さらに血圧低下中。どうしますか?」 「血圧上昇システム2号機作動だ!」 「血圧上昇システム2号機作動しました。血圧、上昇しています!・・・血圧安定!」 「なんとか、危機を脱しましたね」 「うむ。このままの血圧を維持するぞ!」 「・・・あ、またまた血圧低下中です・・・」 「なに〜っ!?仕方ない。システム3号機作動だ!」 「了解!・・・これっていつまで続くんでしょうか?」 「血圧が下がり続ける限り、あきらめずに続けるぞ!」 「はいっ!」 ・・・その結果、終わりのない悪循環におちいります。 この悪循環が続くと、取り返しのつかない2つのことが起こります。 第4章 コントロール不能の腎不全 終わりのない悪循環が招く、取り返しのつかない2つのことについてお話します。 1.循環血液量の減少 僧帽弁閉鎖不全症などの左心不全では、 死に直結する呼吸不全を起こす“肺水腫”を防ぐため、 ひたすら、「血圧を下げる」治療をおこないます。 治療の主体は、 ・利尿剤=フロセミド、トラセミド等。血管内の水分を排出することで、肺に溢れる水を減らす ・血管拡張剤=ACE阻害薬等。@血管が拡がることで、肺に溢れていた水がひく ARAA系を抑制することで、血管内の水分を減らす(※) これらの治療に対し、からだは、 血管を縮めたり、減らされた水分を補おうとしたり(※)して対応します。 この繰り返しの悪循環によって、 「からだに循環する絶対的な水分量が減った状態」が出来上がります。 第2章の計算式で説明した通りです。 「からだに循環する絶対的な水分量が減った状態」では、 肺水腫の危険を“減らす”(なくすじゃありません)ことは可能ですが、 腎前性腎不全の危険は増大します。 「それじゃあ、もう少しだけ水分増やして、どっちも起こらないようにすればいいんじゃない?」 ということになります。その通りなんですが・・・ 分かっていても、それが、コントロール出来ないことがあるんです。 2.フランク・スターリングの法則 「心臓は入ってくる血液の量が増えると、それに応じて収縮力が増し、その分拍出量が増える」 簡単に言えば、そういう法則(フランク・スターリングの法則)があります。 もちろん、健康な心臓の場合です。 この法則、間違いを恐れずに、簡単に言い換えるとすれば、 「心臓に入ってくる血液量と心臓から出て行く血液量は同じ」 ということです(もちろん厳密に言えば違いますが、治療と副作用に関しては十分です) つまり、 心臓の拍出量が減った状態では、からだに水分を補給するのが非常に難しくなるということです。 この章の1.でお話したような、 「からだに循環する絶対的な水分量が減った状態」では、 脳や心臓に血液を送るため、少ない水分(血液)を、血管を思いっきり縮めて流しています。 当然、心臓から出て行く血液も少ないので、 心臓に入れる血液量も非常に少なくなります。 すると、どんなことが起きるのでしょうか。 @腎前性腎不全からの腎性腎不全 A胸水・腹水 B浮腫 C失神 などが考えられます。 ひとつずつお話します。 @腎前性腎不全からの腎性腎不全 心臓の拍出量が減るのですから、腎臓に送られる血液も減り、尿毒症を起こします。 もちろん、“肺水腫”起こさないよう慢性心臓病を治療するためには、 避けて通れないのかもしれませんが、 定期的なモニタリングで、急激な進行は防ぐ事が出来ると考えています。 特に、秋から冬にかけてのこの季節、 腎不全を起こしてくる慢性心臓病治療中のペットが急増します。 季節がら、 ・寒さによって血管が縮みやすくなるので、腎臓への循環血液量の減少に繋がることがある。 ・寒いだろうと飼い主さんが温めすぎることで不感蒸泄により、脱水が急激に進行する。 ・寒くなって飲水量が減り、脱水が急激に進行する。 ・定期的なモニタリングが行われておらず、乾燥や脱水に対応した利尿剤の量の調整が行われていない場合 尿毒症が進行することがある。 A胸水・腹水 循環している血液量が少ないのですから、からだは水分を要求します。 利尿剤投与中は、腎不全を防ぐため、通常、自由飲水ですから、 飲んだ水は、腸⇒門脈⇒肝臓⇒大静脈⇒右心房のルートで心臓に到達します。 水は心臓に入りたいのですが、「絶対的な水分量が減った状態」では、 前述の通り、心臓内に入ることが出来なくなり、大渋滞し、静脈の壁からもれ出ます。 その結果 胸腔で漏れれば「胸水」=呼吸不全の原因になる 腹腔で漏れれば「腹水」 の原因になります。 他院で僧帽弁閉鎖不全症の治療中、 「肺水腫は起こさなくなったけど、胸水と腹水が溜まるようになって・・・両心不全と言われた」 そんな飼い主さんが、何人かいらっしゃいました。 心臓病の病期「C」であれば、止むを得ないところもあります。 絶対に肺水腫を再発させたくないので、からだはカラカラに干している方が安心ではあります。 ただ、「B−1」や「B−2」から、薬を多く飲ませている症例も散見されるのも事実。 「これって、薬必要か??」って思う症例と年に何頭か遭遇します。 「B−2」であっても、 やはり、定期的なモニタリングに基づいて、 血圧を下げる薬(利尿剤・ACE阻害薬)の投与量を調整しながら漸増あるいは、漸減することが、 絶対的に必要だと考えます。 B浮腫(ふしゅ=むくみ) 下肢にむくみが出たりすれば、一目瞭然ですが、 むくみは目に見えるところだけに現れるとは限りません。 もし、胸水・腹水があるなら、 臓器も浮腫を起こしていると考えるのが自然です。 腸が浮腫をおこすと、消化・吸収機能が損なわれ、 食欲が低下したり、内服薬の効果が低下することがあります。 C失神 心臓にも、「心臓を動かすための血管」があります。 冠状動脈です。 冠状動脈は大動脈の基部から始まり、心臓に酸素を供給しながら、 右心房の冠状静脈洞に終わります。 うっ血により、右心房圧が高いと、冠動脈の血流が滞ります。 ちょうど、川の河口から上流に向かって水が逆流しているような状況でしょうか。 それにより、心臓の拍動に異常が生じ、脳が虚血して失神します。 心臓が原因の失神では、パタッと倒れますが、暫くして、何もなかったように起き上がり、 「てんかん」に見られるような発作後期(意識の混濁や異常行動)がありません。 ここにあげた@〜Cを起こしているような状態は、 慢性心臓病では、かなり進行した状態と言えます。 仮に、腎不全があったとしても、 通常の腎不全の治療である“点滴”は効果がありません。 健康な心臓の場合、フランク・スターリングの法則の通り、 静脈に入った点滴液が右心房に到達し、心臓に入ると、 それに応じて収縮力が増し、左心室からの拍出量を増やす事が出来、腎臓への血流量を増やせます。 慢性心臓病の心臓では、静脈に入った点滴液が、右心房に到達しても、 すでに右心房の手前が大渋滞しているため、右心房に入れません。 左心室からの拍出量が減っているため、右心室に入れる血液が制限されるからです。 実際、心雑音がないことを確認した後、尿毒症に対して皮下点滴をし、 点滴した分がそのまま、胸腔や腹腔に漏れだした経験が何回かあります。 仮に、右心房⇒右心室⇒肺⇒左心房と進めたとしても、 僧帽弁が逆流しているため、 左心室の拍出量を超えた増量分は左心房へと逆流し“肺水腫”を起こしてしまいます。 「あれ、カラカラに水分を干した状態だと、“肺水腫”の危険は減るのでは??」 と思った方もいるでしょう。 でも、治療中の慢性心臓病では、 肺の血管の圧力(静水圧といいます)が上昇していること、 水の逃げ道であるリンパ管も静脈うっ血で機能し辛いため、 実は、“肺水腫を起こしやすい状態”なんです。 ここまで、薬の投与自体が招く“コントロール不能の腎不全”について説明してきました。 何度もこの中でお話したとおり、 無治療の僧帽弁閉鎖不全症が招くのは“肺水腫”(呼吸不全)による死です。 肺水腫を起こしてしまった時の治療は、ひたすら「血圧を下げろ、水を抜け!」 “救命”のためにはそれだけを目的に治療します。 極論で言えば、 肺から水が抜ければいいので、 その時点での細かいモニタリングは不要なのかもしれません。 でも、肺水腫を起こしていない場合や、 肺水腫を起こした後に長く命をつなごうとする場合、 細かいモニタリングに基づく、慎重な治療が必要になってきます。 「どうせいつも同じ薬だから・・・」 「うちの犬は元気だから・・・」 「先生がこれで大丈夫って言ってるから・・・」 と、1カ月に1回、診察なしで薬をもらい続けるだけではいけないと考えます。 飼い主さんが勉強され、 「うちの犬には、本当にこの薬が必要なのか?」 「季節に応じて、薬の量を調整しないでいいのか?」 と、“常に考える事”が必要です。 慢性心臓病の結末は、飼い主さんにとっても、獣医にとっても残念なものです。 その結末を双方納得して迎えるためには、 飼い主さんにも「知識」をもってもらうことが必要だと考えます。 コロンボ動物病院では、設備、人員の都合から、 心臓病の治療は基本的にお受けしません。 心臓病の治療は、 「診断⇒薬の処方」だけではないんです。 肺水腫を起こした時の救急治療 薬用量変更の際の、不測の事態 など、常に慎重に、緊急時には迅速な治療が必要です。 いい装置があれば分かることも多く、人手はあるに越した事はありません。 それに対応出来ないのなら、治療は受けてはいけないし、 安易に投薬を開始してはいけないと考えています。 獣医として、なっていない、のは重々承知しているのですが、 それでも、こんなコラムを書いているのは、忸怩たる思いがあるからです。 業界が潤うために、ペットが利用されてはいけません。 結果潤うことと、潤うために利用することでは、ペットの存在意義が違ってきます。 今回のコラム、いつになく難しい内容ですが、何度も読んで頑張って理解して下さい! (※)注釈 ホルモン系の血圧上昇システム「レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系」 ↓ “交感神経系”と並ぶ“強力な血圧上昇システム”です(ACE阻害薬の標的です) ・“腎臓の血流量減少”をうけて、腎臓からレニン(ホルモン)が分泌されることでスイッチが入る。
・“RAA系”の活性化により、腎臓の血流量が回復する。 ・“RAA系”の活性化により、「水分が血管内に蓄積(水分保持)」傾向になる。 ↓ 「肺水腫」(左心不全)」や「胸水・腹水・浮腫(右心不全)」の一因となります ↓ 「今死なない」ために「からだが起こす変化」の重要なシステムですが、 今回のコラムでは、「腎不全」に焦点を絞っているため、 本文内では、詳細な説明は省きました。 2018年6月7日に、「ペットに腸活」って必要ですか?というコラムを書いてからも 世間では「ペットの腸活」傾向に、ますます拍車がかかっており、 ペットフード業界、しかも、本来、特定の疾患を治療するために作られる筈の 療法食メーカーの作るフードにも、「ナントカのひとつ覚え」のように プロバイオティクスだの、プレバイオティクスだの、なんとかティクスだの・・・・ せっせせっせと、添加されています。 もちろん、実際、オリゴ糖や乳酸菌が必要な病気はあります。問題は“TPO”をまったく無視しているところです。 私が、診察をしている上で、 「あー、このフードにオリゴ糖入ってなければいいのに・・」 と感じる場面は、ものすごく沢山あります。 今回のコラムでは、オリゴ糖や乳酸菌などの善玉菌がどういう目的で利用され、 からだの中でどのように働き、 その働きによって、どのようなメリットやデメリットが生じるのかを 実際の臨床現場の事例を交えながら、お話します。 @「腸活」ってなに? 飼主の皆さんは、「腸活」と聞くと何を想像するでしょうか? 健康、善玉菌、免疫向上、長生き・・・・ いいことしか思い浮かばないでしょう。 前出のコラム「ペットに腸活って必要ですか?」をまず、お読みいただきたいのですが、 いいことばかりではありません。 今回は、腸の中で起こっていることを説明することから始めます。 舞台は“大腸”です。 小腸の中にも菌はいますが、「腸活」に関連する菌のほとんどは大腸で働きます。 ○善玉菌の代表・・・乳酸菌とビフィズス菌 「プロバイオティクス」と言ったら、単に、こういう善玉菌を指します。 乳酸菌はブドウ糖(単糖)を腸内でエサにして乳酸を作ります。 空気が嫌いな菌ですが、空気があっても生きていけます。空気がある小腸上部にもいます。 ビフィズス菌はブドウ糖(単糖)を腸内で分解して乳酸や酢酸を作ります。 空気があるところでは生きていけないので大腸にいます。 この二つの菌の働きは、「乳酸や酢酸を作って、腸内を酸性(弱酸性)に保つこと」です。 上の赤字が腸活の「正体」です。忘れないで下さい。 ○その他の善玉菌・・・酪酸菌、納豆菌など 酪酸菌は、オリゴ糖やその他多糖類(※2)を腸内で分解して、酪酸を作ります。 ミヤリ散などがそうですね(クロストリジウム・ブチリカムの宮入株) 酪酸菌は今注目されている菌で、免疫の暴走を抑え、アレルギー疾患への効果が期待されています。 腸内を弱酸性にして・・・というより、腸の蠕動運動のためのエネルギー源として重要なため、 「腸の運動亢進」をサポートして、便の排出を促します。 納豆菌は「アミラーゼ産生菌」です。アミラーゼはデンプンを分解してブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖等を作ります。 つまり、乳酸菌などのエサであるブドウ糖を供給することが主な働きです。 ○オリゴ糖って何? オリゴ糖ってよく聞くけどなんでしょう? 簡単に言えば「ブドウ糖などの単糖が何個かくっついた単糖の集まり」です。 善玉菌である乳酸菌などの栄養は単糖であるブドウ糖ですから、 「最初からブドウ糖を飲めばいいんじゃない?」と考える方もいるでしょう。 そうですね。乳酸菌製剤を飲んだ後で、ブドウ糖を一気飲みしたら、 きっと、ヒトだったら、「トイレから離れられないくらいの水様便」をするでしょうね。 これは、コラム「子猫・子犬を飼う前に読んでもらいたいB」に書きましたが、 先に書いたように乳酸菌は小腸にも住んでいますから、エサであるブドウ糖を大量に摂取すれば、 本来の腸活である、大腸性の下痢ではなく、「小腸性の下痢」をする可能性は十分あります。 小腸性の下痢は人で言えば「コレラ」、犬で言えば「パルボウイルス性腸炎」などがそれで、 ホースの先端から水が出るように、大量の水様便が出て、一気に脱水が進みます。 話をオリゴ糖に戻しますが、ブドウ糖はそのままでは、「小腸で利用・吸収」されてしまい、 沢山の乳酸菌やビフィズス菌が待つ「大腸」に到達出来ません。 そこでオリゴ糖です。 通常、オリゴ糖の結合は、小腸から出る消化液では切り離せません。 大腸にいる腸内細菌の働きによって初めて、「何個かくっついた単糖」が「単糖」に分解されます。 つまり、小腸では利用・吸収されずに、大腸の善玉菌まで届けるために必要な形が、この「何個かくっついた」形なのです。 だから、単糖が「何個かくっついた」形なら、何でも大腸の善玉菌のエサになります。 例えば・・・サイリウム、低分子デキストリン、可溶性繊維、水溶性繊維、増粘多糖類、増粘安定剤などなど・・ いわゆる「プレバイオティクス」(プロ・・じゃありません)といわれる物はすべて、 小腸を通過して大腸に到達し、そこで初めて単糖に分解され、 乳酸菌やビフィズス菌が増えるためのエサとしてに働きます。 先に書きましたが、腸活の正体は、「乳酸や酢酸をたくさん作って、腸内を酸性(弱酸性)に保つこと」です。 いわゆる“悪玉菌”はこれらの菌より“アルカリ”環境が好きで、弱酸性の環境では生きていけません。 まとめると「腸活=オリゴ糖などを利用して、大腸内に乳酸や酢酸を大量に作り出し、悪玉菌が住めない弱酸性の環境を作ること」 Aオリゴ糖、乳酸菌は「便秘のくすり」 前出の「ペットに腸活って必要ですか?」に書きましたが、 「乳酸菌やビフィズス菌」などの善玉菌と、そのエサの供給源である「オリゴ糖」は 基本的には「便秘のくすり」です。 「便秘のくすり」ですから、便の出が良くなるのは当たり前です。程度が過ぎれば下痢するのも当たり前。 よく、下痢をしたときに乳酸菌製剤を飲ませる人がいますが、 併用薬を使っていないなら、ほぼ下痢は悪化します。 だって、「便秘のくすり」ですから。 もし、下痢したときに「乳酸菌製剤が効いている」と感じるなら、 ○食中毒菌など毒素産生性の悪玉菌が原因の下痢 ○小腸の上皮が破壊される疾患であるウイルス性腸疾患やコクシジウムなどの原虫症 ○乳酸菌製剤と一緒に出された併用薬(抗生物質や単純な下痢止め)、あるいは絶食や絶水、あるいは低残渣食が効いている でも、私が診察している限りで言えば、下痢のほとんどが「食餌性の下痢」であって、 「乳酸菌やオリゴ糖の入っていないエサへの変更」、「おやつを与えるのを中止すること」で ほとんどが軽快し、再発しないものばかりです。 B乳酸菌やオリゴ糖が便秘を解消するメカニズム ここでは、乳酸菌などの善玉菌や、そのエサであるオリゴ糖がどのようにして、便秘を解消しているか、 についてお話します。 このメカニズムを理解するためには、下の何個かの用語について、知っていなければなりません。 「浸透圧」・「アシドーシス」・「重炭酸イオン」です。 ここからの説明では、想像力が必要です。頭の中に大腸のイメージ像を作って付いてきて下さい。 @浸透圧 動物の体を構成している最小の単位、細胞の外壁が「細胞膜」です。 細胞膜は生体膜といわれ、半透膜の性質をもっています。 半透膜は細胞の中に水と物質があった場合、水は自由に細胞内外で移動できるけれど、 物質は移動できない膜です。(※1) ここで重要なのが、 @細胞内外の物質の「濃度の差」に応じて、細胞膜をはさんで水のみが移動する。 A細胞内外の水の移動は「内と外の濃度を同じにするために起こる」ので、内外の濃度が同じになると水の移動は止まる。
教科書的に説明します。 長さ1メートル高さ1メートル大きな水槽があります。水槽には水が半分(50センチ)入っています。 水槽の長さのちょうど2分の1のところに細胞膜の仕切りを底面に垂直に立てます。 これで水槽は右側と左側に完全に仕切られました。 この水槽の右側に10kgの塩、左側に5kgの塩を入れます。 水槽の右側と左側には濃度の差があるので、 水は右側と左側の濃度が同じになるように膜をはさんで移動します。 しばらくすると細胞膜をはさんだ右側の水面は約66センチ、左側の水面は33センチになり、 それ以上、水面の高さに変化は起こりませんでした。左右の濃度差がなくなったからです。(※1) 普通に考えて、水槽の仕切りの右と左で勝手に水が移動して水面が段違いになるなんて考えられないですよね。 でも、細胞膜にはそれが出来るということです。 この例で言えば、 浸透圧とは、細胞膜の仕切りをはさんだ自分の側に水を引っ張り込む力のことで、濃度に依存します。 塩を10kg入れた右側の浸透圧(この場合晶質浸透圧といいます)は、塩を5kg入れた左側の浸透圧の2倍だったため、水は右側に移動したということです。 Aアシドーシス アシドーシスとは、漢字で書くと「酸化症(さんかしょう)」 酸性に傾いた状態のことです。 例えば、呼吸性アシドーシス・・・呼気の排出が出来ずに、体に炭酸ガスが蓄積してしまう状態。 糖尿病性ケトアシドーシス・・・インスリンが機能せず、強酸であるケトン体が大量に産生される状態。 尿細管性アシドーシス・・・腎臓の不具合で、体の酸性状態を改善する機能が働かない状態 など、様々あります。 何かの理由で血液が酸性になることを、酸血症(=アシデミア)と言います。 生物は、重度の酸血症を起こすと死んでしまいます。 普通、体がアシドーシスになると、代償作用(元に戻そうとする力)が働いて 酸血症は起こしません。 しかし、代償作用で元に戻せない場合、酸血症となり、危険な状態に陥ります。 併発疾患を持つことが多い高齢な場合や、代償作用が未熟な幼獣で危険度が増します。 酸血症を起こすと、マラソンを走った直後のような、状態になります。 具体的には、元気喪失、食欲不振などです。 B重炭酸イオン 代償作用で重要な役割をはたす、酸血症を中和するアルカリ化物質。 その供給には腎臓が健康に機能すること必要です。そのため、 ○脱水状態など十分な腎血流量が維持できない場合 ○高齢動物で腎臓の機能が落ちている場合 などでは、供給が不十分となり、酸血症を中和することの障害になります。 ここまでよろしいでしょうか?
では、前置きが長くなりましたが、“便秘解消のメカニズム”です。 オリゴ糖や乳酸菌製剤を摂取すると、 ↓ ↓ ↓ オリゴ糖をエサにして、大腸内で乳酸菌やビフィズス菌が大量に増殖する。 ↓ ↓ ↓ 増殖した乳酸菌やビフィズス菌は発酵により、乳酸や酢酸を大量に作る。 ↓ ↓ ↓ 大腸内の乳酸や酢酸の濃度(浸透圧)が上昇する ↓ ↓ ↓ 乳酸や酢酸の浸透圧の上昇に伴い、 @腸の上皮細胞の細胞膜を通して、上皮細胞内→大腸内に水が移動する A経口摂取した水分も濃度差に逆らって大腸の上皮細胞に吸収されることが出来ずに腸管に留まる。 ↓ ↓ ↓ 大腸内の水分によって、便が軟化するとともに、便の体積が増える ↓ ↓ ↓ 大腸の運動亢進と便の体積増加による大腸の拡張刺激により排便が促される ↓ ↓ ↓ 便秘が解消する。 このようにして、排便が促され、便秘が解消します。
これだけ見ると何も問題ないように見えますが、多くの危険が隠れています。 次に、この「便秘解消のメカニズム」に隠れている危険を赤字で添削します。 オリゴ糖や乳酸菌製剤を摂取すると、 ↓ ↓ ↓ オリゴ糖をエサにして、大腸内で乳酸菌やビフィズス菌が大量に増殖する。 ↓ ↓ ↓ 増殖した乳酸菌やビフィズス菌は発酵により、乳酸や酢酸を大量に作る。 ・大量に作られた乳酸や酢酸により、腸の上皮細胞がダメージを受ける。 ・体は腸の上皮細胞を酸から守るため、糖タンパクである「ムチン=粘液」を分泌して対応するが、 ・対応しきれないと上皮細胞の障害から出血を起こす。 ↓ ↓ ↓ 大腸内の乳酸や酢酸の濃度(浸透圧)が上昇する ↓ ↓ ↓ 乳酸や酢酸の浸透圧の上昇に伴い、 @腸の上皮細胞から細胞膜を通して細胞内→大腸内に水が移動する ・腸の上皮細胞は水を排出して脱水する(細胞内脱水) A経口摂取した水分も濃度差に逆らって大腸の上皮細胞に吸収されることが出来ずに腸管に留まる。 ・経口摂取した水分の吸収が妨げられることから脱水が進行する(血管内脱水) ・脱水により腎血流量が低下し、アルカリ化物質である重炭酸イオンの再吸収量が減る(アシドーシスの継続) ↓ ↓ ↓ 大腸内の水分によって、便が軟化するとともに、便の体積が増える ↓ ↓ ↓ 大腸の運動亢進と便の体積増加による大腸の拡張刺激により排便が促される ・繰り返す大腸性下痢により、治療が必要になる(しぶり・出血・元気食欲不振) ↓ ↓ ↓ 便秘が解消する。 ・下痢による悪循環により、アシドーシスから脱出出来ず、酸血症が進行する。 なんとなくイメージが出来ましたか? 「下痢くらいで死なないよ」と思う方もいらっしゃるでしょう 千葉に戻ってくるまで、私は岩手で牛の獣医をしていましたが、 下痢で死んだ子牛を何頭も見ています。 大人の牛と子牛では、消化のしくみが違っています。 子牛は、人や犬や猫などの「単胃動物」と同じ消化のしくみで栄養を吸収するんですよ。 子牛は、母乳を胃の中で固めて(カード形成)から、ゆっくりと乳を消化しますが、 母牛の発情や、牧草の成分変化によって、「母乳の質」が変化すると、 子牛は質の変わった母乳を小腸で消化・吸収出来なくなり、乳が大腸に流入します。 その結果、腸内細菌が過剰増殖し、「結腸アシドーシス(私はそう呼んでました)」を起こします。 重度の脱水とアシデミア(酸血症)から、目は落ち窪み、起立不能となり、適切な処置をしないと死亡します。 病原菌による下痢なんてほとんどありません。犬や猫とまったく同じ「食餌性の下痢」です。 ここまでの話を聞いてみて、飼主の皆さんは何を感じるでしょうか。 確かにここまでの話は、一臨床医である私の見解です。 学会で論文を発表して、コンセンサス(意見の一致)が得られたものでもありません。 でも、当院に来院されたペットに対しては、この考えの下、治療を進めます。 一番大事なのは、「ペットが元気になること」です。 臨床医の利点は、「いいとこ取り」をすればいいという点。 研究や開発は、大学や研究機関にお任せし、 新しい情報の中から、日ごろの臨床に使えるものだけを取捨選択して使えばいいんです。 それと、もうひとつ。 以前、獣医のための講習会で講師を勤めた先生に質問したことがあります。 「処方食に何でもかんでも、オリゴ糖を入れるのは問題あると思うのですがどうお考えですか?」と。
講師の大学の先生の回答は、 「オリゴ糖を入れたからといって、体が酸性になるかは分からない」でした。 先に、アシドーシスの例をいくつか挙げましたが、体内の乳酸(※3)が原因で起こる「乳酸アシドーシス」というのがあります。 そして、「乳酸アシドーシス」には3つの型があります。
@A型乳酸アシドーシス AB型乳酸アシドーシス BD(ディー)−乳酸アシドーシスの3つです。 @A型は、循環血液量の減少(ショック)により、、組織が低酸素になると乳酸産生が増加して発生。 また、乳酸の主要な代謝臓器である肝臓の血流が低下すると、その乳酸を処理しきれずに悪化する。 AB型は、循環は正常だが、激しい筋肉運動の結果、乳酸産生が増加して発生する。 問題はBのD(ディー)−乳酸アシドーシスです。 「D-乳酸アシドーシスは乳酸アシドーシスのまれな病型であり、空回腸バイパスのある患者または 腸切除後の結腸(大腸)で生じる細菌性炭水化物代謝産物のD(ディー)乳酸が 全身性に吸収される。ヒト乳酸脱水素酵素はL(エル)−乳酸しか代謝 出来ないため、D−乳酸は循環血液中に存続する。(出典 MSDマニュアルプロフェッショナル版) D-乳酸を代謝する乳酸脱水素酵素はDDHといい、体内に存在するものの、哺乳類が通常利用するのはL−乳酸のため、 効率よく代謝出来ず、アシドーシスの原因となるということです。 犬や猫がDDHを多く持つかを探しましたが、それについては情報が得られませんでした。 細菌は、D−乳酸をエネルギー源にできるそうですが・・・犬猫も細菌よりはヒトに近い。哺乳類ですからね。 犬の腸の長さは人間と同程度(体長の5倍程度)、猫の腸は人間や犬より短い体長の4倍程度とのこと。 猫であれば、十分「短腸症候群(腸が短いことにより起こる弊害)」が起こりうる腸の短さですし、 何よりも「細菌性炭水化物代謝産物がD(ディー)−乳酸であることは注目すべき点です。 日常的にオリゴ糖等を摂り続ければ、「アシドーシス」の原因にはなりえると考えます。 環境要因や飼養条件により、脱水が進行していれば、悪化するのは言わずもがなです。 C必要なのは、「飼主さんが正しい知識を持つこと」と「業者がTPOを守ること」 なんの気なしにペットに与えているものが、 「ペットを傷つけている可能性があると認識すること」が重要です。 例えば、今、与えている「おやつ」の数々・・・。
本当に必要なのでしょうか? ここで、例を挙げて、皆さんに考えていただきたいと思います。 高齢動物が便秘気味になると、「腸の健康をサポートする」という謳い文句から、 オリゴ糖や乳酸菌が入ったものに飛びつく飼主さんが多く見受けられます。 そもそも、なぜ、高齢動物は「便秘気味」になるのでしょうか? コラムの「老犬・老猫・・冬にきをつけること」でお話したように 高齢動物が「便秘」をする一番の原因は“脱水”だと考えます。 ○腎機能の低下による多尿による脱水 ○筋肉量の低下による体全体の水分量(体液量)の減少 ○脂肪量や循環血液量の低下、代謝の低下から「寒がり」になると飼主さんが過剰に温める ↓ ↓ ↓ すると、「不感蒸泄=呼吸で失われる水分量」の増加により脱水が進行する。 ○ペット自身も好んで、暖かい場所に移動する(こたつ・暖房器具の前・無制限の日なたぼっこなど)。 これらを考えても、一番必要なのは、 「いかに水分を与えるか」「いかに水分を喪失させないか」である筈なのに 目の前にある「腸の健康をサポート・・」という言葉に飛びついてはいませんか? 実際、この冬から現在にかけて、食欲不振を訴える老犬・老猫はあとを絶ちません。 診察の際の細かい聞き取りでも、 「水分補給や水分喪失の予防」より、「何でもいいから食べるものを・・」と言う考えから、 安易に「液体タイプのおやつ」を選択するケースが非常に多いです。 そして、その「おやつ」には「腸の健康をサポートする」という名目でオリゴ糖や乳酸菌が配合されています。 「うちは1日1本しか与えません!」っておっしゃる飼主さんがいらっしゃいますが、 体重4kgの犬や猫が1本なら、体重60kgの人なら15本ですよ。 オリゴ糖の入ったものを15本食べて、水を飲んだらどうなるか・・・ ・・・・考えただけでも、腹がゴロゴロ鳴ってきます・・・・ もし、それでも「硬い、コロコロの便」をしている犬猫がいるなら、 「摂取する水分が不足している」か、「すでに脱水している」のだと考えます。 もし、「最後まで好きなものを食べさせて、あとは自然に・・」 とのお考えなら、それはそれで何も問題ありませんが、 処方食メーカーは、いつまで、なんでもかんでも「オリゴ糖」や「サイリウム」を 処方食に配合し続けるのでしょうか? 例を挙げれば、まず、A社の処方食には、ことごとく「オリゴ糖」や「サイリウム」 が配合されていますが・・・・ ○腎不全の処方食にオリゴ糖は必要でしょうか? 腎不全では便秘が一般的です。腸の酸性化により、「アンモニアなどの毒素の発生」を軽減するために オリゴ糖を配合しているようですが、脱水する可能性を考えれば、メリットはないと考えます。 腎不全治療では、アルカリ化(酸性化した体を中和)することが重要だという考えにも反します。 (腎不全用カリウム補充サプリメントも、低カリウムを改善しにくいのに、敢えて「有機酸カリウム」を使用しています。) ○尿石症用フードにオリゴ糖は必要でしょうか? 尿石症用フードは尿量を増やすことも重要な機能ですが、 便中に水分が奪われる可能性が高いオリゴ糖の配合は 尿量を減らし、メリットはないと考えます。 ○消化器障害用フードにオリゴ糖は必要でしょうか? 食餌性の下痢の場合、すでに腸内環境は酸性に傾いた状態にあり、さらに酸性に傾けるメリットは ないと考えます。このコラムを通して述べてきた通りです。 次にB社。今回のテーマに沿って言えば、非常に満足していますが、 ○消化器障害用フードにサイリウムを配合したのはなぜでしょうか? サポートセンターへの問い合わせでは、「便秘にも下痢にも対応するために・・」という回答 でしたが、そんなフードあるのでしょうか? 最後にアレルギー用単一タンパク食を作っているC社 アレルギー用の単一タンパク食。食べて下痢をするペットが非常に多い。 正直、「下痢をする」という訴えが、これほど多く寄せられるフードは初めてです。
下痢の原因は不明ですが、やはり、オリゴ糖が配合されています。 検査を受けた上でフードを選択しているので、アレルギーによる下痢とは考え辛い。 アレルギー用フードに「腸の健康を考える」必要がある、と考えているのでしょうか? アレルギー用の「除去食」に求められているのは、 「アレルギーによる痒みが出ない」 「アレルギーによる消化器症状が出ない」 というその点に尽きると思うのですが。 仮に、原因が「オリゴ糖」であろうとなかろうと、 「食べると下痢をする」という声が多く寄せられているのに、 改善策を取らない姿勢にも疑問を感じます。 酪酸菌のTregに対する効果を期待してのことなのか何なのか・・現場の声が聞こえないのでしょうか? せっかくかゆみから開放されても、下痢が続いたら、誰もそのエサを続けようとはしません。 誰の得にもなりません。 (※追記@) その他フードメーカーは、ほぼ全滅なので、エサの選択には非常に苦慮しています。 今回のコラムでは、オリゴ糖や乳酸菌の働くメカニズムについてお話しましたが、 飼主さんは、ご自身のペットに与えるフード購入する際、 フードメーカーが製造・販売するものの中から、選択するしかありません。 その状況でペットを守る唯一の方法は、「正しい知識を持つこと」です。 フードメーカーも所詮は営利目的です。売れればいいんです。 「ペット用に売っているから安心」というのは幻想です。 今回のコラムを是非参考にして、フード選びの一助にしていただけたらと思います。 (※1・・今回は水分の移動について分かり易く説明するために半透膜を例にあげましたが、 実際は濃度勾配に逆らった溶質の移動も可能ですし、物質によっては溶質も移動出来ます(拡散)) (※2・・4月7日訂正しました。菌体内でアミロペクチンに再合成して利用しているようです) (※3・・乳酸は本来、重炭酸イオンの供給源です。乳酸加リンゲル液などはTPOを考えて正しく使えば安全です) (※追記@・・当該フードメーカーは、2020年7月付けで「フード原材料」の変更を発表しました。 今までのフラクトオリゴ糖に加え、「ケストース(オリゴ糖の一種)」
を更に添加したとのことです。 営業担当の話では、「下痢が多いとのご意見が多いため+酪酸菌の増殖を促すため」 という話です。下痢が多いことに対する行動は評価し、この変更が、本当に下痢を抑えるのかを 注視したいと思います。添加する塩分量は変えていないとの事ですが、もともと、サーモンは 他の2種に比べ塩分が多いので、飲水量が増えるこれからの季節が、下痢させずに痒みをおさえられるか、 真価が試されると思います。こちらから「ペットフードにオリゴ糖は必要ありません(追記)」に進めます。 コラム「ペットフードにオリゴ糖は必要ありません」に出てきたフードメーカーC社。 アレルギー用の単一タンパク食を作っている会社です。 「サーモンの単一タンパク食(蛋白源がサーモンのみ)」を食べて下痢をするという意見がとても多い。 つい先日、そのC社から「整腸剤とアレルギー」という題の学術資料が送られてきました。 プロバイオティクスの有用性が沢山書かれています。 その記事は、とても勉強になり、是非とも飼い主さんにも読んでもらいたい記事です。 そして、その記事の最後は、このように締めくくられています。 単一タンパク食などに変更すると、腸内細菌叢が乱れるので、便の性状が変わることがあります。 便が変わった時には、整腸剤が有効です、と。 うちのフードを食べて軟便や下痢をしたら、整腸剤を飲んで下さい。ということでしょうか。 この記事を読んで、ふたつのことを感じました。 まずひとつ目は、 フードメーカーは、実際にフードを食べる犬、与える人、薦める人の事は考えていないな、と。 エサを変えれば、腹が慣れるまでに時間がかかるのは誰だって分かっています。 飼い主さんは、高い対価を支払って検査を受け、検査結果に基づいたフード、 「動物病院でしか買えない」「決して安くない」フードを“獣医の指導の下”与えています。 当院では、フードの変更による“下痢”を予防するため、 腸を新しいフードにゆっくり慣らすよう、1週間程度かけて、給与量を徐々に増やしていきます。 遅延型の食物アレルギーに対応出来るか確認するため、最低1ヶ月は食べ続けてもらうので、 「下痢をする」という申し出は1ヶ月以上エサを食べた飼い主さんから受けることが多く、 しかも、そのフードには、腸内細菌のエサとなるオリゴ糖はすでに配合されている。 つまり、フードメーカーの言う、いわゆる「腸内細菌叢に配慮したフード」であるのに、です。 飼い主さんは、どう思うでしょうか? 「このフードに変えたら下痢をした。うちの犬には合ってないんじゃないかしら・・」 「先生は、整腸剤を一緒に与えながら様子見て下さいと言う。整腸剤っていったいいつまで続けるの?」 私は、牛の獣医をしていましたが、エサの質の変化に敏感な草食獣の牛でも、 「エサは変更は3週間かけてゆっくりと」です。牛でも3週間で新しいエサに原虫や菌が対応出来るんですよ。 雑食性肉食獣の犬が、別のエサに適応するのに、そんなに長い時間かかるとは思えません。 もし、本当に、整腸剤が有用なら、最初からエサに配合すればいいだけの話です。 実際、外国製のフードには、ラクトバチルスとかビフィドバクテリウムが配合されているものもありますから。 日本のフードだって、LBSカルチャーとか、配合しているフードありますよね。どんどん入れればいい。 今回のマイナーチェンジで「ケストース」というオリゴ糖を配合してますしね。 それで下痢をしないのなら、また、下痢をしても、短期間で改善するのなら大歓迎です。 犬はかゆみと下痢から開放されて、獣医とフードメーカーは儲かって、WINWINWINじゃないですか! ただ、ここでひとつ疑問が生じます。 前出の学術資料「整腸剤とアレルギー」にも書いてあったように、 経口投与したプロバイオティクスは腸内に定着しないようです。 例えば、T-regを増やす効果が期待される酪酸菌の一種、「ミヤリサン」。 名の知れた整腸剤です。 ミヤリサン製薬のHPにも、「飲んで3日以内に排泄される」と書いてあります。 前出の学術資料には、「下痢をしたら整腸剤を飲みながら食べてね!」ともとれる記述がありますが、 整腸剤を<<飲み続けない限り>>、C社のフードは下痢を止められないということでしょうか。 いつ終わるとも知れない、 下痢をした時の対応を、飼い主さんや現場の獣医に丸投げするのはいかがなものでしょう。 最後にもうひとつ、単純な疑問ですが、 「サーモン」を蛋白源にしている市販のフード(商品名は書きませんが)を食べて、 下痢をしたなんて話、聞いた事ありません。何故なんでしょう? 送られた記事を読んで感じたふたつ目は、 「検査を受けた結果によって選択する“除去食”」であるはずのフードに 「一般的なアレルギー対応フードの性格」を持たせずにはいられなかったということ、か。 「検査を受けた結果によって選択する“除去食”」なのだから、 理論上は、「アレルギーが出ない」フードであるはずなのに、 何故か、“整腸剤のアレルギーに対する効果”を期待してしまった、 ということでしょう。 そのことは、今回送られてきた「整腸剤とアレルギー」という学術資料から容易に読み取れますし、 フードのマイナーチェンジを知らせる文書でも、 声高に「“T-reg”に対してケストースを配合」と謳っていますから。 でもそれって、“除去食”の概念とは、少し違いますよね。 “除去食”の概念なら、サーモン、タピオカ、菜種油をグジャグジャっと混ぜて与えればいい(基本的には)。 母体が検査センターなのだから、検査結果に基づく純粋な“除去食”にこそ価値がある、と 個人的には思うのですが。 結局、的が絞れなかった、ということに尽きると思います。 ただひたすらに残念です。 とはいえ、“食べて下痢をする”という、欠点が完璧に改善されれば、 それはとてもいいことですから、評価したいとは思っていますが、 新たに、食物アレルギー検査を受けた方には、非常に薦めにくくはなりました。 それは、本来、フードが市場に出回る前に行って欲しい、 「マイナーチェンジ」による臨床試験的要素が付加されてしまったからです。 飼い主さんに対して、「犬が下痢をするかもしれませんが、改良されたので、試してみてください」 とは薦めづらい、ということです。 当院では、第一選択のフードには出来ません。 飼い主さんとの話次第ですが、二番手、三番手でしょうね。 学術資料「マイナーチェンジ後の消化器症状の発生件数・日数の減少」 を待ちたいと思います。 学術資料「整腸剤とアレルギー」を読んで感じたことを書きましたが、 「食べて下痢をする」なんて時点で、市販のフードなら、とっくに淘汰されてます。 飼い主さんは、皆さん、藁にもすがる気持ちで、このフードに賭けてるんですよ。 仕方ないから、他にないから、買っている。 そのことをフードメーカー、特に処方食メーカーは、もっと考えなきゃいけないと思います。 今回のコラムは、 飼い主さんも一緒に勉強しましょう!というこのコラム本来の目的から外れてしまいました。 お読みになることで、飼い主さんのペットの飼う上での一助になれば、と思います。 「肺水腫」と聞くと、私自身を含め、皆さんがまず思い浮かべるのが、「心臓病」だと思います。 心臓病が原因で起きる肺水腫は、「心原性肺水腫」といいます。 つまり、肺水腫には、“心臓病が原因にならないもの”もあるということです。 今回は、飼い主さんが、何の気なしにおこなっている、「愛犬の散歩」が、 肺水腫を引き起こしてしまうかもしれない、という話です。 特に、「短頭種」と言われる、頭の丸い犬種で、
これからの“高温多湿時”、注意が必要です。 「陰圧性肺水腫」というのですから、どこかが「陰圧」になって発生するのですが、 まずは、そのメカニズムについてお話します。 皆さんは、「陰圧」と「陽圧」の違いが分かりますか? 例を挙げると、 「陽圧」は・・シャカシャカ振った後の炭酸飲料の缶やビン。 「陰圧」は・・未開封のジャムのビン詰め。 「陽圧」は容器の中にぴったり入る気体の量よりもたくさんの気体が押し込まれている状態。 容器に穴が開けば、押し込まれていた気体が一気に飛び出します。 「陰圧」は容器の中にぴったり入る気体の量よりも少ない気体しか入っていないのにフタがされている状態。 容器に穴が開けば、容器の中に本来入ることが出来る量の気体が、一気に入って来ます。 未開封のシャムのビンを開けると、「プシュッ!」と音がしますね。 あれは、ビンの中が「陰圧」だから、蓋を開けたとたんに空気が入ってくる音です。 もし、新品のジャムのフタを開けた時「プシュッ!」と音がしなかったら、 蓋が開けられた後、蓋に隙間や穴がある、ビンの中で菌が繁殖してガスを出している・・・などですから、 そのジャムは食べてはいけません。 話が横にそれましたが、簡単に言い換えると、 「陽圧」はパンパンに入った「気体が飛び出しそう」な状態 「陰圧」は「気体、もっと入ってこーい!」と吸い込もうとしている状態です。 息を「吸って」「吐いて」する時は、 この、「気体、もっと入ってこーい!」と「気体が飛び出しそう」を連続して繰り返すことで 呼吸が成り立っています(※1)。 このとき、入ってくる気体の量=出て行く気体の量であれば苦しくありません。 ここまでいいでしょうか? ここから、今日のテーマである、短頭種の「陰圧性肺水腫」の話です。 短頭種は生まれつき呼吸器に異常がある場合が少なくありません。 この“生まれつきの異常”は成長とともに、悪化することも一般的です。 この呼吸器の異常は、ひとくくりにまとめて「短頭種気道症候群」と言われたりします。 短頭種気道症候群では、一般的に「息を吸う」ことが障害されます。 つまり、「息を吐ける」けれど「息を吸えない」状態が持続します。(一方弁(いっぽうべん)化) 一生懸命、息を吸おうとすることで 「気体もっと入ってこーい!」という“陰圧”の状態が亢進します。 「陰圧」は吸い込もうとしている状態ですから、空気だけでなく、 肺の毛細血管から血漿成分を、肺の間質内や肺胞内に引き込みます。 このようにして、「陰圧性肺水腫」が発生します。 イメージが沸かない方は、こう想像してみて下さい。 洗面器に顔をつけて、息止め競争をしています。 顔が水に浸かっているいる間は、当然息が吸えませんから、 息を吸い込むために使う「横隔膜」や「肋骨の間の筋肉」は動きません。 息止めが限界に達し、顔を水から上げた瞬間、 空気を思いっきり吸おうとして、横隔膜や肋骨間の筋肉がいっせいに強く動きます。 まさにその時、気道や胸腔内の陰圧が急激に上昇し、空気を鼻や口から吸うのと同時に 肺内に血漿成分を吸い込みます。 人でも「陰圧性肺水腫」は発生しており、気道閉塞解除後の発生が一般的との事です。 短頭種では、外鼻孔狭窄(がいびこうきょうさく)、軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)、喉頭嚢反転(こうとうのうはんてん) など、 「散歩中」は@からだの酸素要求量が増えるとともに、 A呼吸によって体の熱を放散させるために、 呼吸数が増加し、「気道閉塞状態」が助長されます。 その結果、胸腔内や気道内の「陰圧」が亢進し、「陰圧性肺水腫」を発生させる要因になります。 人医療における治療は、 ○酸素吸入 ○改善しない場合は、気管挿入による酸素吸入 ○気管挿管による酸素吸入で改善しない場合、PEEPによる陽圧呼吸管理(※2) が行われるとのことです。 人医療では、「陰圧性肺水腫」が疑われた場合、利尿剤やステロイドなどの薬剤投与は通常行わないようですが、 獣医療では、「陰圧性肺水腫」を断定することは難しく、 薬剤投与を含めた「心原性肺水腫」や「急性呼吸窮迫症候群」に準じた治療が行われるのが一般的だと思います。 もし、「陰圧性肺水腫」だった場合、薬剤投与に反応しないケースも考えられるため、 全身麻酔下での気管挿管、陽圧呼吸管理が出来る設備や、人員が揃った施設を受診すべきと考えます。 「短頭種は乗せられません」という航空会社がある程、短頭種は呼吸に関して「特別」な品種です。 注意しすぎても、しすぎる事はないと考えます。 高温多湿時の無理な散歩は避け、秋になってから沢山散歩して、 愛情を注げばいいと思います。 注1:深呼吸以外は、呼気は陽圧ではないと思いますが、分かり易く説明するため。 注2:PEEP(呼気終末陽圧)は、息を吐き切った時でも、気道内が陽圧になるように酸素(空気)を押し込んで管理する調節呼吸。 当コラムの「7.意味のない感染症検査」で簡単にお話しましたが、 今回は、もう少し詳しくお話します。 ちなみに当ホームページの 「予防」を見ていただくと更に詳しく書いてあります。 毎年、春〜初夏にかけてのこの時期になると、 「フィラリアの検査って毎年毎年必要なの?」とか、 「うちは、ちゃんとやってるから検査しなくても大丈夫よね?」とか、 そんな質問をたくさん受けます。 おひとりおひとりに、ちゃんと説明したいのですが、 飼主さんにしっかり理解していただくのは、非常に難しい・・・。 飼主さん毎に「犬糸状虫症の理解度」がまったく違うからです。 ある飼主さんはフィラリアが「蚊からうつる病気」であることは知っていても、 「心臓に住む寄生虫」であることは知らない。 ある飼主さんは「フィラリアが心臓に住む寄生虫で、蚊が媒介する」ことは知っていても、 「1回飲むと1カ月ずっと効いている」と勘違いしている。 「知らない部分」や「勘違いしている部分」を訂正しながら、 短い時間で、1度説明した程度では、完全に理解していただくのは無理なのかもしれません。 ですので、最近は、検査が必要か、必要でないかを“プリント”にしてお渡しし、 「ご自身のペットが該当するようでしたら、検査を受けに来てください」 と話すようにしています。 そうすると、8割方の飼主さんは、検査を受けにいらっしゃいません。 当院では、近年、検査を強制していないので、それも止むを得ないと思っています。 「止むを得ない」とは思っていますが、「安全だ」とは言っていません。 本当を言うと、「うちの犬は、検査が必要ですか?」と飼主さんから聞いていただきたいのですが、 聞いてくださる飼主さんも決して多くありません。 幸いなことに、船橋近辺は、フィラリアの予防率が非常に高いんです。 皆さんが、予防してくれていれば、感染症に関しては、安全な集団が出来上がっていますから、 予防の仕方が間違っていたとしても、感染しないかもしれませんし、 もっと言えば、仮に、予防しなかったとしても、感染しないかもしれません。 でも、あくまでも「感染しないかもしれません」なんです。 実際、フィラリア陽性犬は船橋にもいますし、千葉県でも、すこしベットタウンから離れれば、 腹水で腹部が膨れたフィラリア陽性犬が、毎年亡くなってます。 私が木更津の動物病院で修行をしていた時には、顕微鏡検査で、 血液中でバシャバシャ泳ぐ“ミクロフィラリア”を何回も見ました。 教科書的には「動かないミクロフィラリアもいる」ということですが、 地引網で浜に揚げられた魚のように「バシャバシャ」動いてましたよ。 それからもう1点。“検査の重要性”をお話しする根拠があります。 それは、「子犬の時の予防が不確実」である点です。 教科書的には、「生後6〜8週経過していれば予防を開始してよい」ということになっています。 フィラリア予防薬が「60日さかのぼって予防出来る」ことを考えると、 春から秋に生まれた子犬は「生後2ヶ月から予防を開始」しないといけないのですが、 ペットショップで販売されて家に来たときには、2ヶ月齢を過ぎています。 つまり、この時点で予防を開始していない場合“予防の網の目をかいくぐるフィラリアがいる” ということです。 そして、もし、心臓に到達されると、5〜6年は生き続け、 「ミクロフィラリアを生み続ける」可能性があります。 そのため、ミクロフィラリア検査のみを実施する場合は、 フィラリア成虫の寿命とされる6年程度は、毎年行うべきです。 ミクロフィラリアが血液中に大量に存在する状態で予防薬を飲むと、犬が死亡することがあるからです。 もし、毎年のミクロフィラリア検査を回避したいならば、 @1年中投与(冬も1ヶ月1回の投与を継続) A適切なタイミングで抗原検査を受ける。 しかありません。 ミクロフィラリア検査が“確定診断出来ない検査”であるのが@Aを行う理由です。 なんとなくご理解いただけたでしょうか? きっと、“対岸の火事”のように思っている方もいるとは思いますが、 「今そこにある危機」なんですよ。 これから船橋でのフィラリアの検査についてお話しますが、 フローチャート式にやってみますので、確認お願いします。 <<質問>> 質問@ 2019年は、飲み始めが7月15日以前である。 「はい」⇒質問A 「いいえ」⇒回答@ 質問A 「飲み始めた日」と同じ日(1日ならずっと1日)に毎月1回飲めていた。 「はい」⇒質問B 「いいえ」⇒回答@ 質問B 2019年の飲み終わりは12月15日以降(月初めの人は1月1日以降)である。 「はい」⇒質問C 「いいえ」⇒回答@ 質問C2019年の飲み始めの時、ミクロフィラリア検査を受けている⇒回答A 2019年の飲み始めの時、フィラリア抗原検査を受けている⇒回答B <<回答>> 回答@ 感染した可能性があります。2020年の予防薬投与前検査が必要です。 回答A ミクロフィラリア検査はフィラリア感染の確定診断ではありません。 2020年の投与開始前(5月末を強く奨めます)抗原検査を受ければ、2021年からは検査不要です。 ただし、今後犬の生涯を通して、5月末〜12月末まで予防をすることが前提です。 もし、毎年ミクロフィラリア検査を受けるのであれば、抗原検査でなくてもかまいません(フィラリア成虫の寿命まで続ける)。 回答B 2020年度以降は検査をせずに予防薬を飲んでも大丈夫です。ただし・・・ 1、今後犬の生涯を通して、5月末〜12月末まで予防することが前提です。 2、当院の独自の判断で、2019年5月末(6月初旬)以降に初回投与をした方には、検査を強く奨めます。 コロンボ動物病院では、予防期間5月末〜12月末までの8ヶ月を推奨しているからです。 「なんだよ、7月15日が1回目でもいいって言ったばかりじゃないか」 と思われた飼主さんに説明すると、 近年、フィラリア予防薬の投与期間を決定する際、「積算気温を基準としたHDUという指標」が使われます。 簡単に言うと、毎日の気温を足し算していって、その「合計」がある数値に達すると、 蚊の体内で“感染幼虫”が生じる(脱皮して感染能を持つ)ことが分かっているからです。 この指標では、「フィラリア3期幼虫(感染幼虫)に寄生された蚊がいつからいつまで出現するか」を示します。 数年前の指標で、「千葉県は5月中旬〜11月中旬」です。 つまり、どんなに遅くても、5月中旬の2ヵ月後には、予防をスタートしなくてはいけません。 (なぜ2ヵ月後なのか・・は前出の「予防」をお読み下さい) でも、、昨今は春の気温の上昇が非常に早い。桜の開花も年々早まっています。 ぎりぎりの「7月15日が初回」は危険すぎます。 6月15日が初回投与なら、4月15日以降をカバー出来ますし、 5月末日が初回投与なら、3月末日以降をカバー出来ます(5月末投与は1ヶ月以上余裕があるということ) 飲み終わりについては、11月中旬の1ヵ月後以降、つまり、12月15日以降に投与しなければいけません。 (なぜ1ヵ月後なのか・・は前出の「予防」をお読み下さい) しかも、昨今、秋が長く、なかなか寒くなりません。 「12月15日が最終投与」は危険度が上がってきました。ぎりぎりなんです。 12月末日が最終投与なら、11月末日まで感染性のある蚊が飛んでもカバー出来ます。 まとめると、コロンボ動物病院では、1ヶ月の余裕を持って、 検査要不要の判断には、5月末〜12月末までの8回投与を指標にしています。 今後の気温の上昇次第では、予防期間も変わってくるかもしれませんね。 当院での投与に関する“線引き”は今までお話した通りですから、 もしも飼主さんから、 「ウチは7月からよ!」「ウチは6ヶ月!」「最後は11月で大丈夫でしょう?」 私がそう話をされたら、心の中では、「それじゃあダメですよ・・・」 って思います。「ウチは・・・」って。 “根拠”は何でしょう? 「今まで大丈夫だった・・・」は、予防期間や検査の用不要の判断材料にはなり得ません。 少なくとも、獣医が指導するにあたっては。 そして、飼主さんに少し話をしてみるか・・あるいは、プリントを渡します。 あとはもう、個々の判断ですからね。 「だって、薬を沢山買ってもらいたいからでしょ・・」 そうですね。確かに商売ですからね。 でも、当院では、前年に当院を利用された患者さんには、春のキャンぺーン期間中、 「6ヶ月分の料金で8ヶ月分の薬が買える」ようにしています。 実際に、「どう予防すればいいか」、「どう予防すれば、毎年検査を強制しないでいいか」を、 調べて、考えて、やっと導いた正解ですからね。理論武装してる訳です。 飼主さんに「実際大丈夫なんでしょ〜?」とぐいぐい来られても、 「大丈夫ですよ〜」なんて、笑って言えません。 「ダメなものはダメ」なんです。 予防薬は、殺虫剤であり、「やる」「やらない」「いつから」「いつまで」 を強制するつもりはありません。 投与期間を緩くしようと思えば、いくらでも緩く出来るし、 検査基準だって、いくらでも緩められます。 ただし、それと引き換えに、「正確性」とか「根拠」とかは失われていきます。 「正確性」や「根拠」がない予防は、やる価値があるのか甚だ疑問です。 実際、何で???っていう情報も巷にあふれてますし・・・ 先日、当院に送られてきた“受付に置いてね!”的な無料雑誌には、 「フィラリア予防薬は、蚊が出る“1ヶ月前から飲み始め・・・”」って書いてありました。 なぜ、蚊が出る1ヶ月前スタートなのか・・・ 雑誌にする前に誰も疑問を持たなかったのか・・・ 多くの人が目にする雑誌でしょうから心配です。 最後に教科書に書いてあるフィラリア抗原検査についての記述です。 「循環血液中の抗原は通常感染後6.5〜7ヶ月までに検出され、5ヶ月より前では検出されない。 7ヶ月未満の子犬に抗原検査を行う意味はない。 成犬の検査は前の伝播時期を過ぎて約7ヶ月後に行うように推奨されている。」(出典:SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE FOUTH EDITION) また、同教科書には、“市販のキットは大半がERISA(酵素免疫法)で、 7〜8ヶ月以上の雌虫が最低でも3隻以上寄生していると陽性反応が得られる”、事や、 “大半のキットでは、5ヶ月齢未満の犬糸状虫は検出されず、また、雄虫に対する感受性はない”事も、 記されています。 これらの知識があれば、「検査の要不要」についても、理解が進むと思います。 ちなみに、今回このコラムで取り上げたのは「犬の犬糸状虫症」です。 「猫の犬糸状虫症」では、検査内容に少し違いがあります。ご注意下さい。 ◎「心臓病」の治療。知っていて欲しい事。(2019.7.23) 当院では現在、レントゲンが使用できません。 レントゲンは、「肺水腫」の評価には、絶対的に必要であり、 「胸水」の診断でも、エコー検査の結果によっては、必要となることがあります。 本来であれば、レントゲンが使用できない時点で、心不全治療を実施すべきではありませんが、 まだ、「心不全の治療を受けたことがない飼い主様から」治療のご希望があった場合、 ご説明を行い、ご同意が得られれば、お受けすることもあります。 当院で心不全治療を希望された患者様の場合、 月1度の定期的な血液検査とエコー検査(当院のエコーは白黒エコー) その結果に基づいた投薬量の調整を行っています。 「えっ、なんで毎回血液検査?」 と感じる方もいると思いますが、 心臓病の治療をする際、肝臓の数値、腎臓の数値、さらには、ANP などの数値を見ながら、投薬量を調整することが 絶対的に必要だと考えています。 その理由は、今回からの心臓病・心不全に関するコラムでお話していきます。 このコラムが、少しでも、心不全治療の理解を深めることに役立てばいいと思います。 日本救急医学会(ヒト)のHPでは 「心不全とは、心臓の異常のために全身の臓器の需要に見合うだけの血液を 心臓が駆出(くしゅつ)できなくなった結果、惹起される循環系の病的状態(循環不全)である」 とあります。 簡潔に分かり易く書かれていますね。 では、実際に心臓病や心不全と診断されたとき、 からだの中はどういう状態で、どのような治療が行われるのでしょうか。 ペットが心臓病を持っている場合、 症状の急激な悪化によって「左心不全」から「肺水腫」を起こすケースが非常に多く、 それがきっかけで、飼主さんが、ペットの病気に初めて気づくことがあります。 そこで、「肺水腫」とはどんな状態で、 どんな治療を受けて、 その治療では、何が大事なのかを、 例え話をつかって、説明してみようと思います。 想像力をふくらませて、思い浮かべて下さい。 あなたは今、家庭菜園でトマトを作っています。 毎日、朝晩、畑に水をまきます。 畑の隅っこに水道の流し(シンク)があり、畑まではホースを伸ばして水をまきます。 ホースにはシャワーヘッドなどはつけていないため、 遠くの苗に水をかけるときには、ホース先端を、指ではさんで押しつぶし、 水を遠くに飛ばします。 ここまでいいでしょうか。 想像出来ましたか? 次に心不全を、この“水まき”に置き換えて考えます。 水・・血液 水道・・心臓 水道の流し(シンク)・・肺 金属製の固定具・・これにより、水道水は100%ホースに送られる=健康な心臓 ホース・・血管 畑のトマト・・からだ(様々な臓器や器官) まず、“健康な心臓”の場合です。 あなたが、水をまく一番の目的は、「畑のトマト」をたくさん採ることですから、 畑にトマトが良く育つように、十分な水をまきたいと思っています。 まず、蛇口とホースのつなぎ目が抜けたり、水が漏れたりしないように、 蛇口とホースを金属製の固定具でしっかりと固定しましょう。 固定がしっかりしていれば、つなぎ目が外れることはありません。 あなたは、畑の隅々まで、いきおいよく水を飛ばすため、 水道の栓は全開にして、 水の出口である、ホースの先端は指でギュっと押しつぶして 水を遠くに飛ばし、 10分後には、畑の隅々まで、水をまき終えました。 次に「心不全」の場合です。 あなたが、水をまく一番の目的は、「畑のトマト」をたくさん採ることですから、 畑にトマトがよく育つように、十分な水をまきたいと思っています。 蛇口とホースを金属製の固定具でしっかりと固定したいのですが、見当たりません。 仕方なく、蛇口にただ、ホースを差し込むだけにします。 あなたは、畑の隅々まで、いきおいよく水を飛ばすため、 水道の栓は全開にして、水の出口である、ホースの先端は指でギュっと押しつぶして 水を遠くに飛ばそうとしました。 すると、蛇口とホースのつなぎ目から水が噴き出しはじめました。 あなたの目的は畑のトマトに十分な水をまくことですから、 気にしませんでした。 しかし、次の瞬間、ホースは水道の蛇口から外れてしまい、流し(シンク)が水浸しになりました。 流し(シンク)は、“からだ”に例えると肺ですから、肺が血だらけ(うっ血)を起こし、 「肺水腫」=「左心不全」を起こしてしまいました。 では、「心臓病」の場合に「心不全=心臓が機能しない状態」を起こさないためには どうしたらいいでしょうか。 次はは「肺水腫」を起こさないためにはどうしたらいいか、です。 ケース1・・治療がうまく行っている場合。 あなたが、水をまく一番の目的は、「畑のトマト」をたくさん採ることですから、 畑にトマトがよく育つように、十分な水をまきたいと思っています。 蛇口とホースを金属製の金具でしっかりと固定したいのですが、見当たりません。 仕方なく、蛇口にただ、ホースを差し込むだけにします。 あなたは、畑の隅々まで、いきおいよく水を飛ばすため、 水道の栓は全開にして、水の出口である、ホースの先端は指でギュっと押しつぶして 水を遠くに飛ばそうとしました。 すると、蛇口とホースのつなぎ目から水が噴き出しはじめました。 このままでは、蛇口からホースが抜けてしまい、流し(シンク)が水浸しになってしまいます。 あなたは、とっさに、指で押しつぶしていたホースの先端をゆるめ、ホースの出口を広げました。 水は遠くへ飛ばなくなりましたが、蛇口からホースは抜けません。 よく見ると、まだ、蛇口とホースのつなぎ目から、水が出てきています。 このままでは、蛇口からホースが抜けてしまうと思ったあなたは、 水道の栓を少し締めて、水の流れるいきおいを、最初の半分くらいにしました。 すると、蛇口とホースのつなぎ目から、水は出なくなりました。 水のいきおいが半分になってしまいましたが、 20分かけて、なんとか水まきは終了し、畑の隅々まで水をまくことが出来ました ケース2・・治療中に、腎不全を起こしてしまった場合 あなたが、水をまく一番の目的は、「畑のトマト」をたくさん採ることですから、 畑にトマトがよく育つように、十分な水をまきたいと思っています。 蛇口とホースを金属製の金具でしっかりと固定したいのですが、見当たりません。 仕方なく、蛇口にただ、ホースを差し込むだけにします。 あなたは、畑の隅々まで、いきおいよく水を飛ばすため、 水道の栓は全開にして、水の出口である、ホースの先端は指でギュっと押しつぶして 水を遠くに飛ばそうとしました。 すると、蛇口とホースのつなぎ目から水が噴き出しはじめました。 このままでは、蛇口からホースが抜けてしまい、流し(シンク)が水浸しになってしまいます。 あなたは、とっさに、指で押しつぶしていたホースの先端をゆるめ、ホースの出口を広げました。 水は遠くへ飛ばなくなりましたが、蛇口からホースは抜けません。 よく見ると、まだ、蛇口とホースのつなぎ目から、水が出てきています。 このままでは、蛇口からホースが抜けてしまうと思ったあなたは 水道の栓を締めて、水の流れるいきおいを、ホースの先からポタポタ落ちるくらいにしました。 すると、蛇口とホースのつなぎ目から、水は出なくなりました。 水のいきおいが全然なくなってしまった結果、 1時間かけても、畑の隅々まで水をまくことが出来ません。 あなたは、ポタポタしか出てこない水でも、必死に水をまき続けましたが、 畑は乾燥してしまい、トマトの苗は水不足で枯れてしまいました。 畑のトマト・・からだ(様々な臓器や器官)ですから、水不足でトマトの苗が枯れるということは 脱水(腎前性の腎不全)で、様々な臓器や器官が損傷を受けるということです。 今回このようなことを書いたのは、以下の理由からです。 ○心臓病治療で 血管拡張剤(ホース先端を緩める=血圧低下)や、 利尿剤(水道の栓を締めて、ホースに流れる水の絶対量を減らす)の投与量は、 定期的に血液検査を行い、 さらに、外気温や室温、エサや水の管理、運動量、体重など 血圧や血液量に関わる諸条件を考慮して微調整するべきです。 怠れば、薬の投与自体が、 「コントロール不能の腎前性腎不全を起こす原因のひとつになり得る」 ということです。 「もう1回、水道の栓を開けて水を流せばいいだけじゃないか!」 と思ったあなた・・・ 生きた体はそんな簡単なものではありません。 「コントロール不能の腎不全」なんです。 心臓病の治療は、「薬を飲んでいれば安全」というものではありません。 微調整によって「コントロール可能な状態」に維持するための努力が必要なのです。 なぜ、コンントロール不能の腎不全に陥ってしまうのでしょうか? 次回以降のコラムでお話します。 @に続いて、もう一回言いますよ! 「皆さん!犬や猫は“毛皮”を着ていることを忘れていませんか?」 現在の「夜の気温」は何度くらいでしょうか? 20℃を超える日はほとんどありませんね。「17〜20℃」といったところでしょう。 一方、日中は、天気がよければ屋外では25℃を超える日が多くなってきました。 ,それに加えて、「湿度」が非常に高くなってきましたね。 さすがに、日中まだ地面が熱い時間にペットの散歩をする方はだいぶ減ってきました。 気温が最も高くなる時間と、湿度が最も高くなる時間にはズレがありますから、湿度の高い日は、 “より遅い時間”の散歩が必要です。十分注意して下さい。 飼主さんが「タンクトップに短パン」にでも着替えないと、暑くて散歩できない陽気なら、 ペットには“耐えられない暑さ”ですよ! このコラムコーナーで「季節の変わり目・具合悪くなってますよ!」を書いた4月以降、今日まで 「熱中症」と思われる症状で、来院する「室内飼い」のペットが後を絶ちません。 日本救急医学会(ヒト)の「熱中症診療ガイドライン」によると、 “熱中症”には、次の三種類があるそうです。 「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」 ◎「熱けいれん」は、めまい、大量の発汗、筋肉痛、こむらがえり、などで意識障害を認めません。 ◎「熱疲労」は軽度の意識障害をともなうことがあり、 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力、判断力の低下が症状で、医療機関の受診が必要です。 ◎「熱射病」は意識障害、けいれん発作を症状とする熱中症の重症例です。 ペットの場合、ほとんどが赤字の状態で、飼主さんが異常に気づくと思います。 つまり発見時には、すでに軽症の段階を通り越して、”中等症”ということです。 犬猫は体温が上昇した場合、“動かない”“水をたくさん飲む”“エサを食べない”ことで体温を下げようとします。 ○“動きたくない犬”を散歩に連れ出してはいませんか?体を冷やしたいのかもしれませんよ! ○食欲が今ひとつなのに、やたら水の減るスピードが速くありませんか?水を飲んで体温を下げているのかもしれませんよ! また、ヒトの熱中症では、若い人は“労作性”熱中症、高齢者や疾患を抱えた人では“非労作性”熱中症の発生が多いとのことです。 「労作性」ーでは、若い男性が運動中や作業中に発症することが多く、「非労作性」ーでは高齢者や疾患を抱えた人が室内で発症することが多い傾向とのこと。 ペットの熱中症は、ほとんどが“高齢”あるいは“疾患のある”ペットが室内にいて発症します。 つまり、飼主さんが気を付ければ、絶対的に防げる確立が高いということです。 日本救急医学会・熱中症診療ガイドラインによると、 熱中症の危険度を測る基準として「WBGT」という値が使用されます。 気温と湿度(相対湿度=何%表示の湿度)によるWBGT値の換算表はインターネットで簡単に調べられます。 このWBGTは「気温」「湿度」「輻射熱(ふくしゃねつ)」を1:7:2の割合で考慮して作られる値です。 つまりWBGT値では、「熱中症に関わる条件」の重要度が@「湿度」A「輻射熱※1(ふくしゃねつ)」B「気温」の順だということです。 「うちは窓を開けっぱなしにして仕事いくから大丈夫だよ」 「28℃のドライでつけっぱなしだから、結構涼しいわよ」 「今日は25℃だから、何もしないで出掛けてきたわ」 ここに挙げたものは、すべて熱中症注意、熱中症警戒レベル以上に当ります。 1例として、「室温25℃、室内の湿度50%は=WBGT22℃となり熱中症・注意レベル」です。 この、「WBGT(熱中症指数)」はヒトに対するもので、年齢や疾患は考慮されていません。 もし、ペットが高齢であったり、逆に子犬仔猫であったり、腎不全、心不全、脱水状態にあるときは、その危険はさらに倍増します。 さらに、「ペットは毛皮を着ている」 「ペットは体に汗をかけない」(汗の蒸発による気化熱で体温を下げられない) 「大型犬は、体重に占める体表面積の割合が少ない」(熱放散の効率が悪い) 「短頭種は、呼吸が下手くそ」(呼気による気化熱で体温を下げる効率が悪い) など、ヒトと比べて、さらに熱中症の危険は倍増します。 お願いですから、ペットを室内に置いて外出されるときには、冷房を20℃程度に設定してお出かけ下さい。 毎年、多くのペットが、熱中症から腎臓や心臓を悪化させたり、熱中症をきっかけに亡くなったりするのは残念でなりません。 ※1 WBGT…WBGT値では、「気(室)温21℃」以上は湿度次第で“熱中症注意”になり得ます。 ※2 輻射熱(ふくしゃねつ)…地面や家の壁から伝わる熱。日当たりのいい部屋、コンクリートなどでは輻射熱は高くなります。 ◎季節の変わり目・具合悪くなってますよ!(2019.4.22) 皆さん!犬や猫は“毛皮”を着ていることをお忘れじゃありませんか? 今の季節は、夜に気温が下がるため、“冬毛(アンダーコート)”が抜けきりません。 つまり、「毛皮のコートを着て、気温20度の中を散歩」して・・・ 「毛皮のコートを着て、気温20度の部屋でくつろぐ」・・・ 日当たりのいい部屋なら、体温上昇はさらに急激ですし、 “日向ぼっこ”で寝ていたら知らぬ間に急激に脱水してしまいます。 今日は平成最後の4月22日ですが、半袖で歩いている人がたくさんいましたよ。 犬や猫にとっては、“冬と変わらない散歩”や“冬と変わらない過ごし方”は 気温の上昇に体が慣れていない今こそ命に関わる危険になりうることを 頭に入れておいて下さい。 犬猫は体温が上昇した場合、“動かない”や“水をたくさん飲む”ことで体温を下げようとします。 “動きたくない犬”を散歩に連れ出してはいませんか?体を冷やしたいのかもしれませんよ! “水をたくさん飲める犬猫”なら、下痢をするのは当たり前ですし、 その傾向は日常的に「オリゴ糖」や「乳酸菌」を与えている犬猫で顕著になります。 もし、「高齢で普段から脱水」していたり、 「普段からあまり飲まない」犬猫なら 洗濯物が乾くように“脱水”するでしょう。 「嘔吐」や「下痢」が脱水を加速させるのは“いわずもがな”です。 これから6月位までが“熱中症”の危険度が一番高いと思います。 7月から9月位までは、冷房が本格稼動し、飼い主さんの意識も高まるため意外と安全です。 油断が生じるこれからの季節の方が危険度が高いのです。 犬猫は“毛皮のコート”を着ていることを、どうぞ忘れないで下さい。 ○ミルクは熱湯で作ってはいけません! 粉ミルクにお湯に入れて作るとき、「ダマ」が出来てしまい、 苦労される方は多いと思います。だからと言って、 ミルクを熱湯で作るのは、“絶対に”いけません。 「粉ミルクを入れた水」や「液状ミルク」をレンジでチンもダメです。 子犬子猫が食滞(胃腸が動かなくなる)を起こし、死ぬことがあります。 食餌性の「下痢」は、まだなんとか出来るのですが、 子犬・子猫が食滞を起こし、「便が出ない」場合は重症です。 ミルクの中のタンパク質は高い温度に曝されると“変性”してしまいます。 “熱変性したタンパク質”は通常通り消化・吸収されずに、食滞の原因になります。 液体のミルクを温めるときは、「レンジでチンは×」「湯煎で温める○」です。 ミルクの容器に「何度のお湯で溶かす」とか、「あたため方」が書いてあると思いますので、 給与前に必ずチェックして下さい。 ○室温に気をつけましょう 特に夏場なのですが、「子猫・子犬は冷やしてはいけない」と 部屋をあまり冷やさない人がいます。 実際、“寒い”のと“暑い”のはどちらが危険なのでしょうか。 もちろん、月齢、個体ごとの健康状態、栄養状態、飼育環境などの諸要因次第ですが、 コロンボ動物病院では室温21〜22℃を推奨しています。 「熱中症」のトピックスでも少し書きましたが、 子猫・子犬が1日に必要な水分量は体重1kgあたり80〜90ccです。 それに対し、
成猫・成犬が1日に必要な水分量は体重1kgあたり40〜60ccです。 子猫・子犬は大人の2倍水分を必要としているということです。 言いかえれば、大人の2倍、脱水しやすいということ。 母親の母乳を飲んでいるときは、いつでも好きなときに母乳が飲めます。 仮に、生活環境が多少暑くても、脱水した分、好きなだけ母乳を飲めばよいのですが、 人が世話をしている場合、そう出来ない場合があります。 ・ミルクやフードは、いつでも飲める訳ではなく、人の都合であること。 ・留守番の場合は、何らかの理由で水分摂取出来ないことや、水分喪失(嘔吐・下痢など)することがある。 また、子犬・子猫は筋肉量が少ないので、 水分を貯める予備タンクが大人に比べて少ない(常に補充しないと生きられない) 水分が足りない状態で室温が高い部屋にいたら、あっという間に熱中症です。 もし、体温低下が心配なら、“ダンボールハウス”を用意しましょう。 体の大きさに合ったダンボールを調達し、組み立てたあと、10cm四方の穴を開ける。 中には座布団や毛布をいれてフカフカにする そして、室温を21〜22℃に設定します。 自分で自由に歩ける子犬・子猫ならば、寒ければハウスに入り、ハウスが暑ければ勝手に出ます。 自分で自由に歩けない子犬・子猫、または、歩けてもミルクで育てている間は、 数時間毎に何回もミルクを与えなければいけないので、留守番はさせられません。 現在の室温が高いのか、低いのか、ウンチの状態から分かる事もあります。 元気で、感染症もないのにウンチがゆるい場合、 暑くて、水を飲みすぎていることがあります。 その場合、室温を下げると飲水量が減って、ウンチは硬くなります。 その逆に、便秘気味になっている場合、 暑くて、不感蒸泄(呼吸により水分が喪失すること)により、脱水していることがあります。 その場合、室温を下げて呼吸数が減ると、脱水が改善することがあります。 ただしこちらの場合は、室温を下げるだけでなく、 適切な水分補給も必要になります。 ちなみに筋肉量が少ない老犬・老猫もまったく同じです。 老ペットでは、腎機能も弱っていることが多く、さらに脱水しやすいので、 下痢することより、便秘が日常化するのが一般的です。 夏、老ペットが便秘したときに一番大切なのは 「水分の喪失を防ぐこと(室温・湿度管理)」と「水分補給に努めること」であって、 それを怠った上、便秘の改善効果を謳った「腸内環境を整えるエサ、薬、サプリ」を使用すると 危険な場合があります。詳しくは、「ペットに腸活って必要?」というトピックスに書きました。 こちらも読んでみて下さい。 ○子犬・子猫を購入時にサプリメントを沢山飲ませるよう指示されたら・・ ペットショップからの購入時、店員さんから、 “サプリメント”を色々飲ませるよう指示されるケースが増えています。 子犬・子猫に必要なのは、子犬・子猫用のフード・ミルク等であって、 “サプリメント”ではありません。 何を与えるかは、飼い主さんが決めればいいことですが、 実際に、健康被害が出てしまっているケースをお話します。 腸内環境のための「乳酸菌」などの菌や「オリゴ糖」製剤 と 「低血糖を防ぐ」という目的ですすめられる「ブドウ糖」 の組み合わせです。 この組み合わせで、「家に着てからずっと下痢してるんです」 という子犬・子猫は1頭や2頭じゃありません。 これも詳しくは「ペットに腸活は必要?」というトピックスに書いていますので そちらをご覧下さい。 そもそも、4〜6時間毎にフードを与えていたら、 低血糖なんて起こさないんじゃないでしょうか。(子猫・子犬を飼う前に・・@参照) 低血糖を起こすのは、 @頻繁にフードを与えていない場合、 Aフードを食べない場合、 B嘔吐・下痢をしている場合、 などです。 @は飼い主さんが頑張ればいいことですし、 家に来るときにAやBだったら、状態が改善するまで、家に連れてきてはいけません。 家に連れてきても「輸送ストレス」で悪化するのは目に見えています。 ショップにも獣医はいるのですから、治療して元気になってから引き取るべきです。 前述の「乳酸菌・オリゴ糖」+「ブドウ糖」は下痢するケースが多いため、 十分“低血糖の原因”になりますから、本末転倒です。 「低血糖を起こした時の症状や対処法を、購入時に聞いておく」方が ずっと意味があります。 家に来たばかりで、ストレス等で餌の食いが悪い場合、 子犬・子猫用のミルクを購入し、4〜6時間毎に飲ませるのも、低血糖を防ぐのには有効です。 ただし、離乳食やドライフードをモリモリ食べるようになったらミルクの給与は中止します。 子犬・子猫用のフードは、もともと、栄養成分が非常に濃いので、さらに栄養の濃いミルクを与えていると ミネラル過剰となり、尿路結石等の原因になり得るからです。 実際、子犬・子猫で尿路結石になると、後の管理が非常に大変になります。 十分気を付けましょう。 ○「プロピレングリコール」って知ってますか? これは「アルコール」の一種で、さまざまなものを溶かす“溶媒”です。 「ペットのナントカシート」という“シートタイプ”製品 「ペットのナントカクリーナー」という“液体タイプ”製品 さらには、「半生タイプのドライフード」などの食品にも使用されています。 このプロピレングリコールは、毒性が非常に低く、使い勝手がよいので 医薬品、食品、工業用品などの“添加剤”として重宝されています。 ただ、ペットでは、耳に「接触性皮膚炎」を起こすことも知られています。 もし、プロピレングリコールが配合されている「ナントカシート」「ナントカクリーナー」 を使用していて、皮膚や耳に「脱毛」や「炎症」が見られたら、 ちょっと使用を中止してみて下さい。 表記は、「プロピレングリコール」「PG」「DPG」などです。 もちろん、清拭する頻度、清拭の時の「ちから加減」、綿棒の使用などの影響もないとは断言できません。 しかも、ちゃんと検査した訳ではないので、“因果関係は?”と聞かれると困るのですが、 「ちょっと使用をやめてみる」だけで脱毛や炎症が治ったら ペットにとっても、飼い主さんにとっても「よい事」なのですから 試す価値はあります。 使用を中止して改善しなければ、他の原因を探せばいいだけです。 実は、これに関して苦い経験があります。 当院を開業して間もないころ、外耳炎のペットが来院された際、 院内での治療後、ご家庭でも洗浄していただくために、 製薬会社が製造している“耳洗浄液”を処方したのですが、 「洗浄すればするほど、耳の皮膚が荒れてくる」 とご指摘いただいたことがあります。 勤務医の頃から、何の疑いもなく使用していた洗浄液だったので、 なぜだか分からず、色々調べてみたところ、 可能性のひとつとして、「プロピレングリコール」の関与が浮上しました。 もちろん、接触性皮膚炎は、起こすペットと起こさないペットがいるのですが、 当院では、その後、プロピレングリコール配合の耳洗浄液は使用していません。 ○給水器を使っていたら、ちょっと気を付けて下さい。 特に子犬で問題になることが多いと思いますが、 給水器を取り付ける“高さ”によっては、気管支炎のような症状を起こす事があります。 よく医療ドラマで、人工呼吸をする時、顎先に指をそえて、 患者さんの頭部を斜め上に傾けるシーンがあると思います。 あの角度にすると空気を肺に送りやすくなるからです。 もっと分かり易く言うなら、瓶に入ったコーラを空を見上げるように ゴクゴク飲んで「プハーッ!」ってやつです。 あれは、失敗すると、むせったり、鼻に入ったりしやすいですよね。 給水器の高さを「首が斜め上に向く角度」に設置すると、まさに“あの状態”になります。 すると、鼻からいつも水が出ていたり、呼吸をすると喉がゴロゴロすることがあります。 給水器は斜め上でなく、“まっすぐ鼻の高さ”につけます。 さらに言うなら出来るだけ早く器(うつわ)から飲むように切り替えましょう。 成犬になってからも給水器を続けていると、より、夏冬の脱水が強いように感じます。 おそらく、ちょっとずつ飲むので、乾きが癒えてしまうのだと考えています。 水は命の源。「こぼす」とか「器に足を突っ込む」とかよりも、“飲みやすい”のが一番です。 これも、経験談なのですが、 牛の獣医駆け出しで、先輩獣医について研修していた時、 “子牛の下痢”を防ぐ手段として、 「人工哺育」を導入していた和牛農家さんがいらっしゃいました。 その方は、「下痢は減ったが、毎年、何頭も肺炎で死ぬんだよ」 とおっしゃっていました。 人工哺育では、哺乳時間短縮のため哺乳瓶を高くして、 まさに斜め上に首が伸びるようにして乳を与えます。しかも、 たくさん乳が出るように乳首の穴を大きくします。 これらにより、“誤嚥性肺炎”が増えたのだろうと考えています。 今度観光牧場に行ったら見てみて下さい。 子牛は母牛の乳首を吸うとき、首を斜め下に下げた状態で ほぼまっすぐ(地面と水平に)乳首を吸っていますから。 子牛が斜め上に首を伸ばした、そんな高い場所に乳首はありません。 ○家に来てから10日位は、サークル内で隔離して健康チェックしましょう 子犬・子猫を迎えたら、床を熱湯消毒出来る場所にサークルを設置して 10日間程度は隔離して健康チェックするべきです。 熱湯消毒以外、有効な方法がない感染症もあるのですが、 どうしても場所がない場合は、新聞紙を厚く拡げて、全とっかえ出来るようにするか メーター売りの塩ビシート(台所の床に敷くような)を敷いた上にケージを設置します。 これは、先住ペットがいる、いないに関わらず実施します。 もし、先住ペットがいる場合は、お互いに病気を感染させないため、 より厳密に隔離しチェックします。 「何言ってんの?ペットショップで大丈夫だって言われて買ってきたんだよ!」 お気持ちは分かりますが、保護された場合でも、購入された場合でも、 子犬・子猫が何らかの感染症にかかっている確率は非常に高い。 残念ながら、それが事実です。 感染症の中には、 ○人獣共通感染症(人にも伝染する) ○生活環境を汚染し、排除するのが大変なもの(汚染された環境から、繰り返し同じ感染症にかかる) などもあり、ペットや人の幸福に関わる大問題です。 “元気だから大丈夫!”なんて、まったくあてにならないんです。なぜなら、 “輸送ストレス”(環境の急激な変化によるストレス)により、 隠れていた感染症が発症することがあるんです。 以下に子犬・子猫に多く見られる感染症を挙げます。 ○外部寄生虫・・ノミ・シラミ(犬猫。特にノミは環境を汚染するので排除するのが大変) ○外部寄生虫・・耳ダニ(犬猫。耳疥癬。特に耳毛の多い犬は排除するのが大変) ○消化管内寄生虫・・回虫(犬猫。人獣共通感染症・幼獣では気管型移行するので繰り返し検便必要) ○消化管内寄生虫・・コクシジウム(犬猫。糞便中に幼虫を排出する原虫。幼獣は死亡することあり。 日和見感染。環境浄化困難。原虫。) トキソプラズマ(猫・人獣共通。猫は糞便中に幼虫を排出。幼獣は死亡することあり。 成猫では神経症状。原虫。排除困難。 ○消化管内寄生虫・・瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ:ノミが中間宿主になる条虫。検便では見つけられないことあり) ○消化管内寄生虫・・ジアルジア・トリコモナス(猫で難治性下痢の原因になることあり。原虫) ○猫の上部気道感染症・・ネコ風邪です。ヘルペス・カリシなどのウイルス。日和見感染。排除困難。 ○猫のその他感染症・・マイコプラズマ(肺炎)・クラミジア(結膜炎)・FIV(エイズ)・FeLV(白血病) ○犬のケンネルコフ・・気管支炎。アデノウイルス・パラインフルエンザウイルス・ボルデテラ・マイコプラズマ ○犬猫の皮膚糸状菌症・・いわゆる"水虫"。人獣共通感染症。排除困難。 ○犬・猫のパルボウイルス感染症・・致死率高い。隔離施設が必要。嘔吐、下痢、血便、汎白血球減少症 ざっと挙げただけでも、これだけの感染症があります。 最も注意が必要なのはパルボウイルス感染症ですが、 潜伏期が5日〜12日と言われているので、 「今日家に連れてきたんですけど、健康チェックお願いします!」 と来院されても、何らかの症状が出ていない限り見つけるのは困難です。 しかも、感染力が非常に強いので、仮に糞便中にウイルスを排出している場合、 幼獣が移動した場所、幼獣を触った手指、靴、衣類を通して、次々に伝染します。 ワクチンを接種していても、強毒株に当たれば、安心は出来ません。 消毒薬にも強く、体外に出ても、6ヶ月程度感染能を持つので、 院内感染や、施設内感染も大きな問題になります。 治療に隔離施設が必要なのは、そういう理由です。 ◎「当院が推奨する子猫・子犬を迎えた時のチェック項目」 ご来院前に、ご自身でチェックしてみて下さい。 @糞便検査(便のみ病院に持参→来院前に電話) (便に虫がでることもあり・・長い白〜肌色なら回虫。白くて2〜3ミリで伸びたり縮んだりなら瓜実条虫) (肛門付近や尾に白ゴマみたいなのが付いていたら瓜実条虫) Aノミチェック・・白い紙の上で背中・尻尾の付け根を中心に全身をボリボリして →黒い粒が落ちたら集めて水を霧吹き→赤くにじんだらノミの糞→病院に電話 Bミミダニチェック・・耳の中を見て黒い耳垢・耳を痒がる様子があったら→病院に電話 C嘔吐チェック・・子犬・子猫がひどく吐いている場合→パルボウイルスの可能性あり→病院に電話 D皮膚チェック・・全身の皮膚をチェック。痒がる・脱毛・かさぶた・ガサガサしている・血がにじんでいる →病院に電話 E犬のくしゃみ・鼻汁・・ケンネルコフの可能性あり→食欲あっても病院に電話 F猫のくしゃみ・鼻汁・・ネコ風邪の可能性あり。食欲あれば、まず栄養状態の改善。 食欲今ひとつなら→病院に電話。 G犬の咳・・ケンネルコフの可能性 / 痰を切るような咳の場合、パルボウイルスによる嘔吐の可能性もあり →病院に電話 H猫の咳・・痰を切るような咳の場合はネコ風邪による咽頭炎 / パルボウイルスによる嘔吐の可能性もあり →病院に電話 I猫の目が目やにでくっついている・・ぬるま湯をひたしたカット綿・化粧パフでアイラインをやさしく何度も ぬぐう。 J猫の結膜炎・・結膜が赤いだけ→食欲あれば栄養状態の改善 結膜がタラコのようにふくれている→病院に電話 結膜がふくれて外から眼球が見えない→病院に電話 ※注・・「病院に電話」は伝染病の防除を考えて、「事前連絡の上病院の指示に従って」ということです。 ※注・・小さな子猫の場合、排便・排尿の介助をしないといけない場合があります。 方法は、エサやミルクを与えた後、ぬるま湯をひたしたカット綿や化粧パフで陰部や肛門を優しく マッサージ。 元気で、食欲があり、排便・排尿ができており、上のチェック項目に該当しない場合は、 10日ほどケージ内で隔離して健康チェックしながら、 病院での糞便検査だけを行えば、それで十分です。来院の必要はありません。 当院では「家に着てから10日以内かつ生後56日未満のワクチン接種はしない」方針です。 ワクチンは健康なペットに接種するもので、 輸送ストレスが強くかかっている時期に、あえて接種する必要はありません。 今日接種して、明日には効果が発揮されるようなものでもありませんから。 上記感染症の検出も、「簡単な院内検査で見つけられるもの」から、 「特別な検査キットや、外注検査なら見つけられるもの」まで様々です。 どの検査で、どの病気を検出するかは、飼い主さんとの相談で決定します。 最近、譲渡時に「これは、皆んな持ってるから大丈夫!」 などと、上記感染症に関して言っている人もいるようですが、 「持ってて大丈夫」かどうかを判断出来るのは、 これから10年以上生活を共にする飼い主さんだけです。 お父さんの“水虫”を治すのはとても大変ですし、抗真菌薬だって決して安全性の高い薬品とはいえませんが、 「“水虫”も含めてお父さんが大好き!無理に抗真菌薬なんて使わなくってもいいのよ!」という奥様もいれば、 「お父さんは大好き!でも“水虫”はちょっと・・。協力するから頑張って治そう!」という奥様もいるでしょう。 同じことです。 "耳障りのいい言葉"に惑わされず、飼い主さん自身が、知識を広げて判断して下さい。 これから、10〜20年一緒に暮らすんです。 家の中を歩かせたり、一緒に寝たりするのが「たったの10日」遅れるだけです。 これから先の健康と幸せを考えれば、なんてことはありませんね。 今年も例年に違わず、春から今日までの間、 「子猫を保護した」「譲渡を受けた」という沢山の方から、 診察依頼や、相談を受けました。 子猫の保護や、行政の対応を含む、現在のさまざまな野良猫に関する問題には、 十人十色の考え方があるので、今回は一切触れませんが、 購入・譲渡・保護を問わず、 「子猫を自分で飼おう」と思っている人には是非知っておいて欲しいことです。 書き出しは「子猫」で始まりましたが、「子犬」にもあてはまりますので是非読んで下さい。 まず、大前提として、子猫・子犬は「赤ちゃんなんだよ」ということです。 元気に成長するためには、徹底的な「保護=世話」が必要です。 今から、書けるだけ、具体的に挙げていこうと思いますが、
最近、一番気になっているのが、子猫・子犬の「エサの回数」について、
「1日2回でいいと言われた」という人がすごく多いんです。 「1日2回」・・・どう考えても無理があります。 成長と、からだの維持に必要な栄養を、「2回で食べきれ!」と言っているようなものです。 親といれば、昼夜問わず、好きなときに母乳を飲むんですよ。
消化機能だって未熟な赤ちゃんなんだから、
ドカ食い出来る子猫・子犬なら、消化出来ずに下痢するのは「ある意味当たり前」、 ドカ食い出来ない子猫・子犬なら、栄養不足で、成長不良、虚弱になるのは「当たり前」、 なんですよ。 「生後2ヶ月は赤ちゃんじゃないよ!」 という人がいますが、「保護=世話」が必要と考えれば、やはり赤ちゃんと考えるべきです。 子猫・子犬は口がきけないし、自分でエサを調達することもできません。
「こっちのパウチ食べづらいから、ミルク飲みたいなぁ」
「ドライフードはいやだなぁ」
「お腹すいたけど、置いてあるパウチ、いい匂いしなくなっちゃったから食べたくないなぁ」
「朝ごはん食べちゃったけど、僕はまだまだ食べられるから、昼ごはん用のドライも今食べちゃおう!」
「あー、食べ過ぎてちょっとお腹痛いなぁ」
などと言っているかもしれません。もちろん想像ですけど。 子猫・子犬たちの言葉は分からなくても、 ○エサの食いつき具合、 ○残す量 ○便の量、色、下痢してないか、便秘してないか(下痢・便秘は室温の影響も強く受けますが・・後述) ○元気、活動性 体重が増えてるのか、減っているのか 背骨・肋骨・骨盤の骨は尖(とが)っていないか など、徹底的に観察してあげれば、エサの量や質、回数の問題が見えてくる筈です。 もし子猫や子犬に 「1日2回のエサで大丈夫ですよ」という人がいたら、 ○その人自身が、何らかの事情で「1日2回しかエサがあげられない人」 だったり、
○「1日2回しかエサをあげられない人達」にも買って(飼って)ほしい人 なのかもしれません。
猫も犬も人間も同じ哺乳類です。ちょっと想像力を働かせて考えてみてください。 「ご飯は1日2食で十分だから、お昼ご飯なんて食べなくていいんですよ〜」 子供たちに、そんな事を言う保育園とか幼稚園、聞いた事ありません。 子犬・子猫のエサの回数ですが、 ○まだ、目が開いていない、排便・排尿の介助が必要な哺乳期の子犬猫・・・4〜6時間毎に6〜4回/1日 ○自分で排尿・排便出来るが、ウエットフード主体の離乳期の子犬猫・・・6〜8時間毎4〜3回/1日 ○ドライフードをガツガツ食べ、水もガブガブ飲める子犬猫(〜1歳まで)・・・8時間毎3回/1日 ○生後1歳以上の犬・・・成犬。1〜2回/1日(エサの置きっ放しはダメ) ○生後1歳以上の猫・・・成猫。2〜3回/1日(エサの置きっ放しは原則ダメ・加齢や疾病で例外あり) を目安にして下さい。 ここで大事なのが「青字の〜時間毎」です。 必ず24時間を回数で均等に分けるということです。 「下痢、低血糖を起こしている子犬・子猫」に多く見られるエサの給与方法は、 「朝7時、昼1時、夜7時の3回給与で、夜7時から翌朝7時までエサを与えない」というやり方です。 もし、1日3回給与にするならば、 「朝6時、昼2時、夜10時の8時間ごと3回給与」にして下さい。 上記の通り、哺乳期の子犬・子猫では、食後に必ず排便・排尿を促すマッサージをします。 《方法》・人肌のぬるま湯を浸したカット綿や化粧用パフで肛門と陰部をやさしくマッサージする。 ・皮膚を痛めぬよう「スリスリ」ではなく「チョンチョンチョンチョン」という感じ。 もし、どうしても仕事の都合や、家庭の事情でエサの回数を増やせない場合は、 ご家族の協力、自動給餌器、ペットシッターの利用を考えるのもいいでしょう。 「猫や犬の赤ちゃんの体調」を、「人間の大人の都合」に合わせずに済むよう、
「保護=世話」をしてあげて下さい。
いま、どんなメディアでもひっぱりだこなのが、「腸活」です。 ・・・・腸内環境を整えると、こんなにも素晴らしい効果が〜!!!・・・・ 新聞でも、雑誌でも、ネットでも「腸活」に関連した言葉を見ない日はありません。 逆に言えば、それだけ消費者の腸内環境に対する意識が高いということです。 ちなみに・・・ 「腸活」=大腸にいる腸内細菌を整えることです。 つまり“ 菌 ”の話です。 確かに ○免疫が向上する。 ○逆に、好ましくない免疫(アレルギー)は抑制する。 ○善玉菌の働きで、悪玉菌が減る。 ○大腸がんの予防効果が高い。などなど・・・ さまざまな利点が分かっていて、実際、 「便秘気味だったのに、毎日どっさり!すっきり!」 「おならが臭くなくなった!」 「肌がきれいになった」 など、短期的に効果が現れることも、ブームに拍車をかけている要因でしょう。 ペット関連商品にも、「腸活・腸内環境・善玉菌」といった文字がやたらと多くなりました。 私は、「腸活」を否定するつもりはないのですが、 犬や猫などのペットに必要か?と聞かれたら、不必要だと思っています。 もちろん、飼い主さんのペットですから、どんな育て方をするかは飼い主さんが決めればいいのですが、 これから、このトピックスでお伝えすることぐらいは知っていて欲しいと思います。 食餌性の下痢が減れば、ペットの幸せにつながると確信しているからです。 (T)「腸活」における人とペットの絶対的な違い 獣医の立場からみて、人の「腸活」とペットの「腸活」が違う意味を持ってしまう一番の原因は、 ・・人はトイレでウンチをする・・ ことにあります。 「腸活」をすると、トイレで「どっさり!すっきり!」感を実感出来ます。 皆さん、あ〜スッキリ!と感じるでしょうが、 どのくらいの硬さの、何色のウンチが出たかは、チェックしませんよね。 「どっさり!すっきり!」ばかりに気をとられ、 「どれ位の範囲に飛び散っている」とか、「どれくらいの勢いで出た」とか もっとはっきりいうと、「どれくらい便器の内側が汚れたか」 は、あまり気にしません。 水洗トイレでしかも、洋式トイレが普及している現在は、そんなこと 気にする必要がないからです。 レバーを回せば、ジャーッと勢いよく、水が便器の内側の汚れを流してくれます。 後で詳しく書きますが、 「腸活」すれば、程度の差はあれ、ウンチは色が明るくなり、柔らかくなります。 便器の内側に飛び散るほど柔らかくなることもあるでしょう。 なぜそうなるのかは説明が難しいので書きませんが、 ものすごく簡単に言うと、「血管内の水分を大腸内に移動させるから」です。 それが「腸活」の当たり前の姿です。 犬や猫に「腸活」すれば、人と同じことが起きますが、 ・・犬や猫のウンチは人が片付ける・・ 飼い主さんは、自分のウンチが少しゆるかろうが、色が薄かろうが、トイレの内側に飛び散ろうが、 病院を受診することは、まずないでしょう。 でも、ペットのウンチが、
少しゆるかったり、色が薄かったり、ペットシーツから外に飛び散っていたりすると、 「先生、下痢してるんです」と動物病院を受診します。 (U)勝手に「腸活」になってしまう食材 ペットが、下痢で来院した場合、当院では、徹底的に問診します。 「主食は何ですか?メーカーは?商品名は?」 「犬用のおやつは与えていますか?」 「人の食べ物は与えますか?」 「野菜や果物は与えていますか?」 「サプリメントは与えていますか?」 ・・・・・ すると会話の端々から、飼い主さんのこんな思いが伝わってきます。 「なんだよ・・とりあえず早く治療してくれよ・・・」 「いつも食べてるものなんだから・・・」 「犬用のおやつなんだから大丈夫だよ」 「他の獣医にそんなこと言われたことないよ」 反応は様々です。 確かに、「問診は適当」にして「指導なんてしない」で 注射や点滴だけ"ブスッ"と打つのなんて、獣医からしたら楽だし、簡単です。 黙って注射打って、「はい、また明日も来て下さいねー」ってやれば、病院の儲けにもなりますから。 でも、原因を明らかにして、徹底的に指導すること。そして、 その指導を飼い主さんが実践することで、 ペットは何回もつらい思いをしなくて済むんです。 間違いを恐れずに言うならば、 飼い主さんの愛情が“ 毒 ”になっているケースが多いということです。 話を本題に戻して、 徹底的に問診してみると、 @「腸活」になってしまうかもしれない人の食べ物・犬のおやつを与えている場合、 A「腸活」しないよう、主食のみ与えているのにウンチがゆるくなってる場合、 の2通りがありますが、問題は、後者の主食しか与えてない場合です。 この場合、考えられるのは、 「エサが原因でない場合(重大なトラブル)」 「それでもなお、エサが原因の下痢である場合」の2通りです。 「エサが原因でない場合(重大なトラブル)」は特異的な治療が必要ですので今回は省きます。 主食しか与えていないのに、ウンチがゆるくなるペットの中には、 毎日の食事が、勝手に「腸活」になってしまっているケースがあります。 私が診察していて実感するのが、 下痢の多くが、「腸活」について、知識を深めると解決してしまうもので、 飼い主さんが意識を変えれば、大げさな治療など必要ないものばかりです。 ペットによっては、下痢で来院の必要すらなくなるかもしれません。 逆に言えば、「腸活」について知らないと、重症化してしまい、ペットが死ぬことだってある、 仮に重大なトラブルが原因の下痢でも、 飼い主さんに「腸活」の正しい知識があれば、「食餌性の下痢」の可能性が除外出来るので、 より早く下痢の原因を見つけることができる、ということです。 【主食に含まれる「原材料」】 @菌・・「○○菌」「ラクトバチルス」「L.○○」「ビフィズス菌」など Aオリゴ糖(フラクトオリゴ糖など)、難消化性デキストリン、サイリウム、水溶性繊維、可溶性繊維、増粘多糖類、増粘安定剤など B乳糖、ブドウ糖、麦芽糖(マルトース)、果糖(フルクトース)など Cミルク(乳糖を含むため) もし、主食の原材料に上記@〜Cの文字があったら、 飼い主さんが「腸活」しようとしていなくても、勝手に「腸活」するエサと言えます。 ウンチがゆるくなるのは普通のことです。 【飼い主さんが、よかれと思って与えているズバリ「腸活」製品】 ○生菌製剤(ビオ○○など)、難消化性デキストリン、ヨーグルトなど これらを与えれば、積極的に「腸活」をしたことになり、 ウンチがゆるくなります。 では、次に、徹底的な問診の結果、 「腸活」になってしまうかもしれない人の食べ物・犬のおやつを与えている場合です。 【人の食べ物】 ○不溶性繊維を多く含む野菜、サツマイモなど炭水化物を多く含む野菜、果物全般 不溶性繊維は、大腸で発酵により分解されたり、ウンチの体積を増したりします。 炭水化物や果糖は本来、小腸で分解され吸収されますが、 雑食性の人間とは違い、 肉食性(雑食)の犬や肉食性(肉食)の猫では、多くが吸収しきれず大腸に 到達してしまい、「腸活」に貢献してしまうと考えられます。 ○火を通した肉・硬い肉(ステーキ・ササミなど) 消化が悪く、小腸で吸収出来ず、大腸に到達してしまい「腸活」に貢献。 体重5kgの犬に1切れの肉を与えたら、体重70kgの人に換算したら=14切れです。 体重5kgの犬に2切れの肉を与えたら、体重70kgの人に換算したら=28切れです。 体重5kgの犬に3切れの肉を与えたら、体重70kgの人に換算したら=42切れです。 ・・・ もはや、大食い選手権ですね。ウンチはゆるくなりますし、膵炎の危険因子です。 ※「めちるめるかぷたん」の発生要因にもなり得ますが、今回は省略。 【犬のおやつ】 上に書いたことすべてが当てはまります。 「腸活」に貢献し、ウンチがゆるくなります。 ※「めちるめるかぷたん」の発生要因にもなり得ますが、今回は省略。 こういうものを与えて、ウンチがゆるくなったら「当たり前」と思って下さい。 重症化さえしなければ、病気ではありません。 飼い主さんの多くが「下痢してるんですけど、元気なんです」とおっしゃいます。 ちなみに「腸活」で起こる下痢は大腸性の下痢なので “しぶり”(繰り返す強いいきみ)や“腹痛”や“血便”を伴うことはあります。 「仕事から帰ったら、家のあっちこっちに下痢してあって〜。元気なんですけどね・・」 という感じです。 もし、元気がなくなったら、「重症化した」か、「別の病気のサイン」です。 「重症化」しやすいペットは、脱水している、高齢、暑熱ストレス、腎不全などで、 すべての悪化の要因となるのは、アシドーシスという病態です。 腎不全のペットに「腸活」を行うことを薦める方がいますが、同意出来ません。 便秘によるNH3等“ 毒 ”の発生を抑えるメリット以上に、 脱水やアシドーシスによるデメリットの方が大きいからです。 今日では処方食メーカーの「消化器障害」用フードにも、 続々と「腸活」を促すような成分が使用されています。 「腸活のしすぎでウンチがゆるくなったペット」に 昨年まで、安心して処方出来ていた「消化器障害」用フードも、 原材料に「腸活」材料が入ったため、おいそれとは処方しづらくなりました。 最後の砦だったのに・・・。残念で仕方ありません。 メリット、デメリットを考えると、やはり私は、ペットに「腸活」は不要だと思います。 飼い主さんも、ひとりの獣医の意見として片付けず、肝に銘じて下さい。 狩りをして、食べ物を自分で調達できないペットだからこそ、 ペットの口に入るものは、十分注意して与えるべきです。 熱中症は、重症度により症状も様々で、生命に危険を及ぼす危険な症状です。 しかし、熱中症は、飼い主さんが気をつければほぼ100%防げる病気です。 熱中症になってしまった原因には、次のようなものがあります。 ○車の中に、ほんの10分、留守番させた ・・・皆さんご存知のように、車中は信じられない暑さになります。 ほんの10分が命取りです。 ○昨日シャンプーして、ドライヤーをかけた ・・・普通の日常ケアのようですが、気温や湿度が高いなか、 「カゼをひいてはかわいそう」と、温水で長時間洗い、ドライヤーを念入りにかける。 毎年、熱中症の原因や、心臓の悪いペットが、命を落とす原因になっています。 シャンプーの仕方は、当ホームページに詳しく記載してあります。ご一読下さい。 ○「うちは風通しがいいから、留守番は窓を全開にして、扇風機をまわしておけば大丈夫。」 ・・・ペットは、体に汗をかきません。 風が当たってひんやり感じるのは、汗が蒸発するときに熱を奪ってくれるからです。 体に汗をかかないペットは、人が思うより、体から熱を逃がせません。 やはり、屋内では、エアコンを使用するべきです。 よく、「うちの犬は南の犬だし、小型犬だから寒くすると風邪引く」 という人がいますが、留守番中に室温が高くなって命の危険が生じる よりは、春の陽気である20℃(※)の室内に置いていくほうが、ずっと 安全です。 「うちの子、冷房が嫌いですぐ出てっちゃうんです!」と言う方、 簡単です。冷房の部屋から出て行かないようにドアを閉めてからお出かけ下さい。 特に脱水しやすいのは、 ○子犬・子猫・・1日あたり80〜90ml/体重1kgの水分が必要なんです。 留守番中に水分補給できない状態で、「暑さ」を感じたら最後、 洗濯物が乾くようにあっという間に脱水します。 一度脱水すると、自力で水を飲むことが出来なくなることだってあるんです。 「20℃の設定は低すぎる」という人がいますが、 吹きっさらしの20℃にしろ、と言ってるんじゃありません。 部屋全体を20℃にして、フカフカの小屋は必ず用意します。 涼しい部屋で丸くなって寝ている方が絶対安全ですし、 20℃の室温がダメなら、犬や猫はとっくに絶滅してます。 ○高齢のペット・・腎機能が落ちている場合は、より危険です。 脱水は容易に、血液中の毒を濃縮します。 また、脱水して尿量が減ると、腎臓内で尿がゆっくり移動するようになります。 すると、本来尿として排出するべき毒素が、体内に戻ってしまうんです。 この“負のスパイラル”が急激な尿毒症を起こす原因となり、 腎臓に不可逆的な(元に戻せない)ダメージを残します。 ○「エアコン、つけてますよ。設定温度は27℃です。」 ・・・コロンボ動物病院がおすすめする室内の設定温度は20℃です(春の陽気です)。 まず、日当たりのよい部屋では、壁を通して輻射熱(ふっくしゃねつ)が伝わり、 エアコンが効かない原因になります。 窓から入ってくる日光も室温を上げる原因です(ビニールハウス状態)。 病院に動物を入院させるとき、ケージ内が25度では、動物はすやすや眠れません。 小型のペットでは21〜22℃(ステンレスケージは狭くて熱伝道がいいので20℃よりは上げます)、 心臓の悪いペットや大型犬は18度ですやすや眠れます。 寒くて震えていたら、その時に温度調節すればいいだけです。 飼い主さんが「私が風邪引いちゃうわよ!」というのは別問題です。 あくまで、ペットのことを考えております。 ○「散歩は夕方、日が暮れてからです。」 ・・・日が暮れても、すぐに道路の温度が下がる訳ではありません。 必ず、散歩前に、飼い主さんの手で、道路を触ってみましょう。 温かかったら、散歩するには要注意です。 また、湿度が非常に高い時の散歩にも十分な注意が必要です。 毎年、夕方から夜の散歩後に体調が急変するケースが多く見られます。 飼い主さんが涼しくても、道路から数10センチの高さにいるペットが涼しいとは限りません。 また、短頭種では、「陰圧性肺水腫」によって、重篤な状態に陥ることだってあるんです。 ○「うちの犬は外で飼っているけど、日陰にいるから大丈夫です。」 ・・・その日陰、一日中、日が当たらない日陰でしょうか? 1日何時間かでも、日があたる場所(とくにコンクリート)は、日が当たらなくなっても、 なかなか温度が下がりません。 飼い主さんもサマーセーターを1枚着て(犬の体毛のかわりに) 犬を繋いでおく場所で30分位過ごしてみましょう。 飼い主さんが暑く感じたら、犬を繋ぐには不適当な場所です。 犬は体に汗をかけないのだから、飼い主さんよりもずっと暑い筈です。 熱中症の疑いがある場合、早急に体温を下げる必要があります。 @エアコンのあるところなら、エアコンを18度(出来るだけ低く)にして、体に霧吹きする。 なければ、とにかく体に水をかける。 お腹を冷やした方がいいので布団の上などではなく、床の上がいい。 A扇風機、なければ、うちわ、板等、なんでもいいので、風を体に向けて送る。 人が風呂上りに扇風機の前にいると、汗が引いて涼しく感じる(気化熱で体温を下げる)要領です。 B嘔吐がなく、自力で水を飲むようなら、十分与えます。 Bその後、ペットの状況によって動物病院を受診してください。 《その他注意事項》 ※氷を入れた水風呂などは、末梢の血管を縮めすぎてしまい、熱の放散を妨げることがあります。 まずは@〜Cの方法を試しながら、同時に動物病院の指示を仰いで下さい。 ※熱中症は、重症化すると、高温の血液により血管の内側がダメージを受けます。 このダメージが原因で、後から重篤な症状が出る場合が少なくありません。 体温が下がった後も、数日は、散歩をやめたり、暑いところには置かないなど 「涼しく、安静に」を徹底して下さい。 ※昨年までは21〜22℃を推奨していましたが、下げました。 ひと昔前とは違い、現在の住居は高気密で、日当たりがいい部屋などは エアコンを付けていても、壁からの輻射熱で室温が下がらない事が多いようです。 今、動物病院では、様々な「予防薬」や「駆虫薬」を取り扱っています。 飼主さんにもよく聞かれることですが、 皆さんが一番気にされているのは、「安全性」です。 ここで、フィラリア予防薬(線虫駆虫薬)とノミ・ダニ駆除薬について考えます。 まず最初に理解してほしいこと、それは、 ナメクジにかける「塩」とは違うんだ、ということです。 これらの寄生虫に対する薬は、「殺虫剤」なんです。
フィラリア予防薬として、最も市場に出ているイベルメクチンなどの「アベルメクチン系抗生物質」、
背中につけたり、おやつに練りこんでノミ・ダニを駆除する
フェニルピラゾール系化合物、イソキサゾリン系化合物は
ほとんどの薬剤が、寄生虫の神経を「死亡するレベルまで興奮させる」、 ことによって虫を殺します。 ここで問題になるのが、使用するペットに対して、「有害」それとも「無害」かということ。 結論から言えば、「無害とは言えない」ということです。 「じゃあ、有害なんじゃん!」と思う人は、予防薬は使用しない方がいいと思います。 ほとんどの薬は、薬にもなるが、毒にもなります。 「毒」にもなりえる「薬品」の「有効量」を調べるために 繰り返し試験が行われ、 「多くの個体に有効」量以上で、かつ、「多くの個体に副作用が出ない」量を決定し、
その試験結果が認められたら、市場に出まわる。 すべての薬が、このステップを踏んで販売されます。 「多くの−」というのが重要で、決して「すべての−」ではないんです。
同じ量を使用しても、「効果が出ない」ペットはいるし、
「副作用が出る」ペットもいるということです。
逆に考えて、副作用のない薬はありません。 仮にあるとすれば、その効果も限定的なのか、あるいは、”ラッキー”かです。 すべての薬を使用するとき、必ず考えなければならないことは、
「有効性」が「危険性」を上回っているのか。
「副作用」が起きる危険性を上回るメリットがあるのか。
ということです。
当院では、正規の販売ルートを通じて流通している薬について、
「安全ですか?」と聞かれたら、「安全です」と答えます。 臨床試験を行ってパスした薬しか、正規ルートには乗らないのですから当然です。 「じゃあ、危険はないのか?」と聞かれたら、
「危険がないとは言い切れません。殺虫剤ですから。」と答えます。
結局、飼主さんが決めるしかありません。
「100%安全じゃないのなら使うの止めよう」 「100%安全じゃなくても、フィラリアに感染した時のリスクの方が怖いから使おう」 「100%安全じゃなくても、ノミ・ダニに噛まれて血を吸われるのはかわいそうだから使おう」 といった具合です。 最後にひとつ。 当院では、家に来てから10日以内の仔犬・仔猫は正面受付から入れません。 まずは、お電話いただき、診察の必要がある場合は、飼主さんも含め、他のペットと 接触しないようにするためです。 「抱っこしているから大丈夫です!」という人がいますが、 そういう問題ではなく、仔犬・仔猫が一番、伝染病や寄生虫の感染源になる可能性が高いからです。 嫌な顔をされる飼主さんもいますが、逆の立場で考えて下さい。 ご自分のペットが病気にならないよう、ワクチンをうったり、予防薬をつけたりしているのに となりに座った人が、「今日ペットショップから来たんですが、咳してて・・・」とか 「今日拾った猫なんですが、ノミとかいるかもしれないから診てもらいたくて・・・」とか 「待合室別にして欲しいな〜」って思いませんか? 時間の経った便でも、強い感染能がある「パルボウイルス」という怖い伝染病もあるし、 ノミの卵を家に持ち帰れば、生活環境が汚染され排除するのは至難の業です。 病院内が汚染されれば、院内感染の危険度も上がります。 当院には隔離施設がないので、「家に迎えて10日以内の犬・猫」の診察をご依頼の場合、 まずは、お電話下さい。 その上で、獣医師の指示に従っていただければと思います。 「アナフィラキシー」って言葉、聞いたことありますか? 4つあるアレルギーの型のひとつで、「即時型アレルギー」のことです。 即時型アレルギーは、「アレルゲン(原因物質)に暴露後、
数分から数時間以内に起きる急性のアレルギー」のことです。 日本アレルギー学会の2014アナフィラキシーガイドラインによると、
「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、
生命に危機を与え得る過敏反応」とあります。 人では「小麦などを食べた後の運動」が引き起こす運動誘発性アナフィラキシー
も知られており、必ず「暴露した直後」と言うわけでもありません。 軽症の場合は、熱感、顔の腫れ、かゆみなどですみますが、
重症化すると、
喉の奥まで腫れる喉頭浮腫や気管支収縮などによる呼吸困難、
末梢血管の拡張による循環不全(アナフィラキシーショック)
を起こし、死に至ることもある重篤な状態です。 人間であれば、アナフィラキシーショックは「3次救急」
抗ヒスタミン剤やステロイドの投与、エピネフリンなどカテコールアミンの投与、
循環を維持するための輸液、呼吸困難があれば気管挿管、喉頭浮腫があれば気管切開等が
行われ、救命処置が施されます。 アナフィラキシーショックから救命後も、その後の臓器不全(腎不全など)
にも十分な注意が必要となります。 以前より何度かホームページや看板などで紹介していますが、
今回は、OAS(口腔アレルギー症候群)の話です。 簡単に言うと、「花粉アレルギーを持つペットが、特定の野菜・果物を食べて起こすアレルギー」。
人だけじゃなく、ペットでも起こると言われています。 アレルギーで起こる抗原抗体反応は「鍵と鍵穴」の関係。 アレルゲン(抗原)が鍵にあたりますが、
ぴったり合う鍵じゃなくても、鍵穴にはまってしまい、アレルギーの扉が開いてしまうことを
「交差反応」と言うんです。 日本ほぼ全土に「ハンノキ」という植物があって、その花粉症は一般的です。
「ハンノキ」アレルギーがあるペットが「リンゴ・梨・イチゴ・セロリ・ニンジンなど」を食べると、
「交差反応」によって、アレルギーを起こすことがあるのが分かっています。 口腔アレルギー症候群(OAS)とか花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)といいます。 症状は、軽症から重症まで様々ですが、
摂取後、短時間で症状が現れた場合には、重症化することがあるので、
十分な注意が必要です。 もし、アナフィラキシーが起こった場合は、
様子をみることなく、迅速に、設備・人員の整った病院を受診すべきです。
ショック状態に陥ってからでは間に合いません。 予防策としては、アレルギー体質の場合、OASに対する知識を深め、
原因になりえる食材は回避することです。 人の食物アレルギーでは、どれくらい食べるとアレルギーを起こすかを
調べる「負荷試験」を行いますが、負荷試験で事故が起きているのも事実。 ペットの場合、原材料が明記されている処方食も販売されているので、
敢えて、そんな危険をおかす必要はないでしょう。 なにげなく与える野菜、果物、食材が「アレルギー体質のペット」にとっては、
”命を脅かす可能性がある”という事実を知って下さい。 最近は、「成型したおやつ」。例えば、板状にしたソフトジャーキーの類、
スティック状のおやつに野菜が練りこんであるものが多く出回っています。
何が入っているか分からないものは、特に十分な注意が必要です。 原材料表示をきちんと確認するよう心がけましょう。 実際、そのようなおやつを食べた後、アレルギーと思われる症状(蕁麻疹、かゆみ、下痢、嘔吐)
で来院するペットは少なくありません。 アレルギー体質のペットを飼っている方は、「OAS」「PFAS」で
検索し、理解を深めて下さい。 当院では、カウンセリング(有料)も行っています。
回避すべき食材の資料もご用意しておりますので、
是非、ご利用下さい。 自分のペットがてんかん発作を起こした姿を目の当たりにすると あまりの恐ろしさに、気が動転してしまう飼主さんがほとんどだと思います。 そのため、病院で毎日2回の抗てんかん薬投与を指示されると、
「そういうものなのか。じゃあ、仕方ないな・・」
と、すぐに投薬を始めるケースが多いのではないでしょうか。 1度でも発作が起きたら、すぐ「抗てんかん薬」の治療を 始めなければいけないのか、それについて考えてみます。 まず、「てんかん」の発作ってどのようなものか。
@背骨を伸ばすように体を弓なりに反らせて全身がガタガタと痙攣する「全般性発作」 A顔の半分だけ、体の半分だけが痙攣したり、一部分がピクピクひきつる「部分発作」 この2つのかたちがありますが、最初に部分発作→全般性発作になることもある。 自分のペットが気を失ったり、麻痺したり、震えたりして、 明らかにおかしいが、「てんかん」かどうか分からない場合は、 @動物を広い平らなところに移して、床に頭をうちつけないように頭の下に手を添える。 A呼吸を妨げない、誤嚥させないために横に寝かせる(抱きかかえたり、頭を高くしない)。 Bてんかんの発作ならば、1〜2分でおさまることも多いので、3分は待つ。 Cもし、3分(かなり長いです)経ってもでおさまらなかった場合は、動物病院に行く準備をする。 D−1 準備をしているうちにおさまれば、呼吸をしていることを確認後、病院に電話し、指示を仰ぐ。 D−2 おさまらなければ、電話連絡→動物病院へ向かう。 では、本題の薬の話です。 結論から言えば、「飲まないよりは、飲んだ方が安全」です。 ただし、それには、いくつか条件があります。 @発作の原因が脳にあり、進行性で取り除けないことがMRIなどで確定している場合 A猫であり、血液検査で発作を起こす原因が見つけられない場合 B原因が何であれ、12週〜16週に1回の頻度以上で発作がきてしまう場合 C原因が脳にあり、1度でも発作の"重積"や"群発発作"を起こしたことがある場合 ※"重積"は5分以上の発作、または発作と発作の間に意識回復しない連続発作 ※"群発発作"は発作と発作の間に意識回復するが、1日に何度も発作が来ること なんだか、難しいですね。 てんかんは大きく分けると2つ。「頭蓋内に原因がある」と「頭蓋外に原因がある」です。 もっと細かく分けることもできますが、大分類と思って下さい。 「頭蓋内」は脳の異常や、脳の異常と思われるがMRIなどでも原因が分からないもの。 「頭蓋外」は血液の異常、脳以外の臓器の異常が原因であるもの。 抗てんかん薬の毎日投与を始めるのは、 ○「徹底した血液検査上異常がない」かつ ○「12週に1回以上の発作頻度」または ○「発作の重積・群発発作があった」場合 と考えればいいでしょう。 考え方の根っこにあるのは、発作がおきると、原因が脳にあるなしに関わらず、 「脳の傷は広がってしまう」からそれは絶対避けなければいけない。 ただ、抗てんかん薬は「飲まないですむなら飲ませない」 ということだと理解しています。 「でこぼこな石ころだらけの道」(発作の原因)を、車で走っていると想像して下さい。 車は前後左右に大きく激しく揺れています。 今、石ころが跳ね上がってフロントガラスにぶつかり、ビビが入りました。 経験のある方なら、分かると思いますが、フロントガラスのヒビを放置して、 車に振動を与え続けると、ヒビはどんどん拡がっていき、 フロントガラスごと取り替えなければいけなくなります。 「振動」がヒビを拡げる原因ですから、ヒビを拡げないためには エンジンを切って振動を止めればいいんです。 傷は残っても、そこまでで済みます。 自宅の前が「でこぼこな石ころだらけの道」なら逃げようがありません。 ただの旅先の「でこぼこな石ころだらけの道」なら、 車の修理屋さんでヒビを補修してもらった後、 2度とひどい石ころ道を走らなければいいでしょう。 発作の原因が脳にない、つまり、治療によって取り除ける、 「血液検査で発見出来るような原因(頭蓋外)」なら徹底して調べるべきです。 病院は、薬を出すのは簡単です。 発作がきた→一生涯にわたり薬を出す→病院の利益になる。 仮に、原因が、脳ではなく、血液の異常による一時的なものだったとしても、 原因を突き止める努力をしなくては、 ひょっとしたら、飲み続けなくていい薬を飲み続け、 定期的に高額な検査を受け続けなくてはならないかもしれません。 てんかんの原因が、治療可能な「脳以外の疾患」だった場合、
抗てんかん薬を飲み続けることが、原因をマスクしてしまう可能性だってあります。 例えて言うなら、「僕、胃腸が弱いんだ」と思い込み、実は
”乳糖不耐症”であるとは知らずに牛乳を飲み続け、下痢止め薬を常用し、
「なんとなく効いている気がする」みたいなものでしょうか。 (実は私自身が、数年前、”乳糖不耐症”だと分かったんです・・) 「心配だから、原因は何であれ、抗てんかん薬は一生飲ませます」というなら もちろんそれはかまいません。 「薬は飲ませるけど、原因を突き止めるのに検査検査で負担をかけるのは かわいそうだから検査は結構です」もいいんです。 飼主さんが納得さえしていれば。 コロンボ動物病院では、安易に抗てんかん薬の毎日投与はさせません。 実際、血液検査結果から、フードや生活習慣の改善で、 抗てんかん薬投与の必要がないレベルまで発作頻度を減らせているケースもあります。 抗てんかん薬の治療は、薬からの離脱にも十分な注意が必要です。 飲み忘れたり、勝手に投与量を変えたりも出来ない、 つまり、飲み始めたら、ずっと飲み続けることがほとんどです。 薬代や血中薬物濃度検査代の経済的負担、 毎日の投薬や「いつ発作が来るかわからない」精神的負担の大きさを考えると、 原因は可能な限り特定すべきだと考えています。 意味のない感染症検査、それは、 「生後6ヶ月未満でおこなう、フィラリア抗原検査」
フィラリア抗原検査は、出来れば7ヶ月以上で実施です。
もし感染してても、検査が早すぎて、陽性反応は出ませんよ。
意味がない感染症検査・・二つ目は・・
と、すすめたいところですが、これ以降は、
アイデックスラボラトリースという臨床検査会社がパンフレットに
載せている検査についての記述を要約して書きますので、
飼主さんが判断して下さい。
《ネコのエイズ・白血病検査》 1.猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体 ○ELISA法 ・(−)陰性ならばFIVに感染していないと考えられます(抗体陰性)。 ただし、感染初期の場合もありますので、暴露された可能性が ある場合は3〜4ヶ月後の再検査をお勧めします。 ・(+)陽性ならばFIVに感染していると考えられます(抗体陽性) ただし、生後6ヶ月以内の仔猫の場合、移行抗体 の可能性がありますので、6ヶ月齢以降に再検査を行う必要があります。 以上、抜粋です。 ※暴露とは、「エイズウイルスに接触している可能性がある」という事。 「ネコが家に着たばかり」は、来る前の素性が分からないのでこれに当たります。 ※ELISAでは陰性・陽性に関わらず、「家に来て3〜4ヶ月経過していて、 しかも、6ヶ月齢以上でなければ、猫エイズとは断定しない」ということです。 もちろん、臨床症状が猫エイズを裏付けている場合は、総合的判断が必要です。 2.猫白血病ウイルス(FeLV)抗原 ○ELISA法 ・(−)陰性ならばFeLVに感染していないと考えられます(抗原陰性)。 ただし、感染初期・潜伏感染・回復期の場合もありますので、暴露された 可能性がある場合は90日以降の再検査をお勧めします。 ・(+)陽性ならばFeLVに感染していると考えられます(抗原陽性)。 中には一過性で治るものもあるので、30〜60日の間に再検査を行うか、あるいは 追加検査としてIFAを行い本当に持続感染かどうかを判定する必要があります。 以上、抜粋です。 ※陰性なら90日以降の再検査が勧められ、陽性でも30〜60日以降に再検査、あるいは
別検査を追加して判定する必要があるということです。 これらは、ひとつの臨床検査センターの方針ですが、 当然、科学的根拠に基づいています。 飼主さんが、猫を飼おうというときには、当然、知っていていいことです。 家庭に新たな家族を迎えたとき、 「ついでに検査しましょうか?」と言われても、 「まだ、家に来たばかりだし。生後半年経ってないから、6ヵ月齢でお願いします!」 譲渡してもらうときも、 「検査は陰性みたいだけど、まだ生後2ヶ月位だし、生後半年でもう1回検査ですね!」 と言えれば、スゴいと思います。 お金を払ってやる検査です。 ”意味のある感染症検査”を受けましょう! 2017年12月22日、YAHOOニュース(FNNニュース)にこんな記事がありました。 「子供の耳疾患 過去最多」
内容は、学校の健診で、耳に疾患が見られる子どもの割合が、2017年は、
過去最多となったことが、文部科学省の調査で分かったというもの。
そのニュースの中で、日本耳鼻咽喉科学会の話として次のように書いてある。
「近年、耳あかが詰まる"耳垢栓塞(じこうせんそく)"が増えている。
"必要以上に耳掃除をすると、かえって耳あかを奥に押し込むこともあり、
炎症を起こすこともある"として、専門医に相談するように呼びかけている。」
外耳炎で来院するペット、特に犬で、同じ問題が起きています。
原因は、綿棒や鉗子に綿花を巻いたもので、
耳掃除をすることにあると考えています。
耳の入り口から見て、目で見える耳あかだけ、やさしく綿棒でぬぐう、
あるいは、耳鏡で見ながら、少しずつ掃除するなら問題ありません。
いけないのは、綿棒が真っ黒になるまで、奥の方までグリグリやって、
「ほら、こんなに汚れてましたー!」ってやり方です。
先の丸いもので、いくらグリグリやっても、きれいに取れるわけありません。
カレーライスを食べるとき、スプーンや手を使うのは、カレーライスを
おたまのように掬える(すくえる)からで、米粒ひとつ残さず食べられます。
もし、すりこぎ棒のような先の丸いもので食べたら、
米粒ひとつ残さず、きれいに食べることなんて出来ません。
「耳が臭う」「耳をかゆがる」といって来院する犬の耳を耳鏡で見ると、
耳掃除が原因の場合はすぐ分かります。。
耳あかの溜まる場所が皆同じなんです。下の写真を見て下さい。
矢印の部分まではすごくきれいですが、矢印より奥は耳あかだらけ。
矢印より、向こうに押し込んだように見えるんです。
実際には、L字型に曲がった犬の耳には、矢印の部分までしか綿棒が届かないため、
とれない耳あかの土手が出来てしまう。
盲目的に綿棒や鉗子に綿花を巻いたもので「グリグリ」するのは、
ほとんどの場合、"綿棒が真っ黒になってやりきった感"を得られる自己満足です。
もし、綿棒で奥までグリグリやって、耳を悪くしないのなら、
もともと、溜まるほど耳あかがないということです。
一度、見せてあげたいくらいです。
健康な犬の耳・・本当にきれいですよ。
鼓膜が薄いんです。半透明で、細い血管が走っています。
鼓膜の奥には中耳の耳小骨が透けて見えます。
鼓膜まで続く耳道の皮膚は"真珠の光沢"です。
おおげさに聞こえるかもしれませんが本当です。感動しますよ。
あれを一度見たら、耳の入り口が少しほこりで汚れてようと、
まったく気になりません。
あの感動的な美しさを持つ耳に
「シャンプー液ジャブジャブ」とか、
「(実はとても硬い)綿棒グリグリ」とか・・
ありえません。
耳道がひどくただれて、強烈な痛みを伴う、急性の外耳炎は
「緑膿菌」の感染を伴う難治性の外耳炎であることがあります。
「緑膿菌」は、抗生物質への耐性を容易に獲得するメカニズム、を持っている菌で、
薬に対する反応が極めて悪い。でも実は、特別な菌ではなく、普通にいる菌。
"耳に傷をつけなければ"悪さはしないんです。
急性の外耳炎は、教科書的にも耳掃除やシャンプー後に起こる
と言われています。悪くなっていない耳なら、いじり過ぎないことです。
ただ、アレルギー、原発性・続発性の脂漏症など、脂漏を伴う場合は、
耳だけでなく、全身管理が必要な場合がありますし、
腫瘍や難治性の外耳炎によって、外科的処置が必要な場合もあります。
今お話したような可能性を知らずにいて、いい謳い文句のみを信じているとしたら、それはペットにとっては良くありません
ということです。